黄昏ミュージックvol.21 オーブル街/ザ・フォーク・クルセダーズ
黄昏ミュージックvol.21 オーブル街/ザ・フォーク・クルセダーズ
冒頭から唐突だが、日本のサブカルチャーの源流はフランスにあるのではないだろうか?
一方、アカデミックの源流はドイツに帰着するのでは?と筆者は漠然と皮膚感覚で考える。
戦後、フランス文化、特にポピュラーミュージックを指向するアーティスト達は、「銀巴里」等を拠点に、日本語シャンソンの完成を夢見一途な想いで邁進した時代があり、なかにし礼、岩谷時子等という特化した詩人がその推進力となった。
時は流れ、ニューミュージック、Jポップの萌芽の前夜にも、シャンソン、フレンチポップス以外の視点でフランス的スパイスを生かした良質な楽曲が僅かだが浮上する。
元ザ・タイガースの加橋かつみのパリ録音アルバム『パリII 1972』に収録されている、『ある夏の終わりに』や、先日の全曲完全ライブでも話題となった高橋幸宏のアルバム『Saravah! 』の表題曲、そして、極めつけは、村井邦彦作曲で自身の筆による、安井かずみの『わるいくせ』等。
さて、前振りはこの辺ににして、本題に入ろう。
その安井かずみとその後結ばれることになる、加藤和彦の初のプロキャリアとなった、フォークトリオ、ザ・フォークルスセダーズの楽曲で、『オーブル街』という楽曲がある。
ここでの詩は、メンバーでありこのバンドの多くの詩を手がけた北山修でなく、松山猛の手によるもので、疑似中世設定アニメの原点とも云える、架空の街“オーブル街”を舞台に、加藤の最初期とはとても思えない、完成された欧州パリ風メロディーと上品なサウンドプロダクトが秋の気配を運んでくる純黄昏ミュージックなのだ。
やがてこの路線は、彼のソロプロジェクトへと引き継がれ、『パパ・ヘミングウェイ』(1979年)、『うたかたのオペラ』(1980年)、『ベル・エキセントリック』(1981年)の“ヨーロッパ三部作”として大輪の花を後に咲かせることとなる。(se)