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黄昏ミュージックvol.8 ソウリパ/サリフ・ケイタ

黄昏ミュージックvol.8 ソウリパ/サリフ・ケイタ

 本年6月17日、80年代後半、恵比寿五叉路にあった今や、“伝説のバー”と称される、とあるDJバーのトリビュートイベントが「バー黄昏」で行われた。
 そのバーと、店舗面積的には略同様の黄昏ではあったが、主催者の脳内シュミレーションとは別に入りきれない程の集客で、スタッフもてんやわんやの一夜となった。
 創設メンバーの1人でもあった筆者は、“自身の価値基準より他人の評価が高いということが現実世界には起こりえる”ということを改めてそこで知るのであった。
 さて、当日は、「往年の常連も多く顔を出すであろう」と、当時の人気曲も多く持参したが、“今”の意識も強く、“過去5、今5”くらいの配分での選曲。そんな中、当時を強く思い出す1曲をどうしてもかけるタイミングが測れず、その曲調も正に“黄昏”していることもあり、今回の黄昏ミュージックはその楽曲にさせて頂く。
 音楽大国西アフリカ/マリが生んだ世界的シンガーソングライター、サリフ・ケイタのメジャー初アルバム「ソロ」から、飛び抜けたスケール感を誇るバラード曲「ソウリバ」。
 当時の“ワールドミュージック”というジャンルを強く感じさせる、過剰に人工的なシンセの音色と打ち込みトラックに絡み付く人間の根源をも感じさす純ヒューマンボイスの対比が、この時代のレアな土産物であり、サリフ・ケイタの真骨頂でもある。
 あの時代の恵比寿は、この曲が似合う程に、ナチュラルに無国籍なサイバー空間であった。(se)