黄昏ミュージックvol.31 パラダイス/サン・ラ
黄昏ミュージックvol.31 パラダイス/サン・ラ
ブラックミュージックの一つの要素として“宇宙”という大気圏外へ想いをはせた音群がある。
目立つところを上げれば、多くのヒットチューンを生み出したどメジャーバンド、アース、ウィンド&ファイヤー。そして、アース程の一般的な知名度はないが、彼等以上に後のシーンへ多くの座標軸を示した、ジョージ・クリントンを中核としたPファンク軍団。そんな彼等に影響されたチルドレンは枚挙にいとまがないが、実は随分以前からストレンジとしての宇宙というものはブラックミュージックの中に存在していた。
その代表例が40年代からキャリアを刻んだ今回の主人公、故サン・ラである。
自ら、「土星から来た異星人だ」と語り、彼のアーケストラの面々との宗教性を帯びた集団生活の中から、ジャズ、ブルース、ラテン、ファンク、ディスコ、電子音楽等多様な音楽を生み出した。
そんな空間が湾曲した膨大な音群の中で、密かに光る楽曲が、今回の『パラダイス』に垣間みる独自のエキゾチック感。
エキゾチックミュージックの開祖と呼ばれるマーティン・デニーのデビューアルバムとシンクロするが如く1957年リリースされたビックバンドアルバム『サウンド・オブ・ジョイ』の中で密かに咲くピアノ曲と云う名の名花。これぞ、不快指数極限の東京シティーに涼をもたらす最良の黄昏サウンドだ。(se)