黄昏ミュージックvol.12 13階の女 /あんぜんバンド
黄昏ミュージックvol.12 13階の女 /あんぜんバンド
東京近郊の地方都市に住み、小学上級で既にロックミュージックに感化されていた筆者は、英米のロックミュージックを日常的に聞く生活に入ったのは中学入学くらいだっただろうか?
しかし、地方都市故、その当人である外タレを生で見るのは中学2年まで待つこととなる。
で、あるので、プロのロックミュージシャンはいか程の演奏技術を有しているか?を確かめる術は、当然、国内のバンド且つ自分の街に来るバンド限定での調査となった。
今思い出し記憶にあるバンドと言えば、イエロー、ファーイースト・ファミリー・バンド、チューリップ、外道、コスモスファクトリー、そして、地元のプログレバンド、美狂乱等。このラインナップを見ても当時の筆者がプログレに傾倒したいたことが分かる。
そんな中、和製プログレの雄、四人囃子と近しいという一点のみでライブを見に行ったのが、今回紹介するあんぜんバンドだ。(実際の彼等の業界的棲み分けは、めんたんぴん、センチメンタル・シティ・ロマンス、乱魔堂等と同様のアメリカンロック派とみなされていた)
その程度の予備知識で見たあんぜんバンドの印象は、“四人囃子より全然アメリカ寄りで、プログレ臭はほんの僅か”という、当時の筆者にはなんともつかみ所のないバンドであった。
ライブも滞りなく進んで行き、MCがあったのだろうか?なかったのだろうか?その辺の記憶は非常に薄いが、爆音が収まった後、3声の美しいコーラスでその曲は始まった。
♪彼女にはもぉ〜お こうぉ〜するしかぁ〜なぁ〜いのだ 13階の屋上から 身をぉ〜投げることぉ〜♪
RCサクセションの「スローバラード」同様に、シンプルで破壊力満点の冒頭の日本語に一瞬にしてやられてしまい、ライブ帰りにはシングル盤を購入していた。
ジャケット写真が白人ティーンエイジャーの裸婦なもので、レジに通す時、非常にドキドキしたのを昨日のことのように覚えている。
その後、あんぜんバンドは、76年セカンドアルバム「あんぜんバンドのふしぎなたび」をリリース。ファンク、フュージョンを大胆に導入、一定の高みまでその音世界を昇華し静かに活動を終えるが、Rolly率いるすかんち、大槻ケンヂの特撮等が「13階の女」をカバーするように、多くの潜在的フォロワーが存在し、この曲のみが持つ極上のトワイライト感は永遠のものだということが改めて証明される。(se)