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黄昏ミュージックvol.110 エブリヴァディズ・ガット・トゥ・ラーン・サムタイム/ベック

黄昏ミュージックvol.110 エブリヴァディズ・ガット・トゥ・ラーン・サムタイム/ベック

 カバー曲と一言で言っても、シンガーとアーティストではそのアプローチがまったく違う。
 例えば、かの“ゴールデンボイス”アーロン・ネビルなどは、極論で語れば、楽曲なぞは、「なんでもござれ」で、多分、ワンテイクでスイスイこなしてしまうのだと思われる。
 まあ、嫌いな楽曲は流石に避けるだろうが、本人の表現者としてのバックボーンはアーティストに比べて希薄なのは否めない。
※因みにアーロン・ネビルの選曲にはカントリー・ミュージック好きが反映されている。
 歌自体がシンガーの表現の全てである訳なので、それはそれで当然のことなのだ。
 対して、近年のパティ・スミス、イギー・ポップのカバー・ワークには選曲自体に、自身の過去の創作エキスが、そこかしこに散りばめられており、非常に興味深いものとなっている。
 本年リリースされた、ベックのミニアルバムが正にそれで、彼の特異な音楽性のマテリアルが、境界を超えた複雑なケミストリーによって生まれたものだったのだと確信できる内容なのだ。
 エルヴィス・プレスリー、ザ・フラミンゴス、カエターノ・ヴェローゾ、ハンク・ウィリアムズ、ダニエル・ジョンストン他と、興味深い良質なカバーが連なる。
 どのトラックをセレクトするか非常に迷ったが、表題でありライブでも頻繁に披露するUKのザ・コーギスのカバーが他を凌ぐほど完全に身体性にまで昇華していると判断し、今回は選ばせてもらった。
 たった一言のレコメンド、「秀逸」。(se)