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黄昏ミュージックvol.11 ヴェトナミーズ・ゴスペル /こまっちゃクレズマ+おおたか静流

黄昏ミュージックvol.11 ヴェトナミーズ・ゴスペル /こまっちゃクレズマ+おおたか静流

 長く、今は亡き忌野清志郎に梅津和時が捧げる鎮魂歌としてライブ現場で多くの感動的な演奏を残し一部ファンに高い人気を誇ってきた楽曲「ヴェトナミーズ・ゴスペル」。
 この曲の変遷は、梅津のパンクジャズ的フェーズに焦点をあてたKIKI BANDでのインストゥルメンタル曲として当初レコーディングされ(2001年)、イディッシュのルーツミュージックを独自に梅津が解釈したこまっちゃクレズマにフューチャリングヴォーカルとしておおたか静流を迎え彼女の作詞でレコーディングされた(2007年)アルバム「すっぽんぽん」で歌曲として結実した。
 歌曲に生まれ変わってからは多くのシンガーにカヴァーされ隠れた名曲としての地位を確実なものとなった。
 通常、ヴォーカリストと云うよりもヴォイスパフォーマーとの比喩の方がしっくりくるおおたか静流だが、この曲での歌唱は、正に純ヴォーカリストの姿そのもので、昭和歌謡デカダン「アカシアの雨がやむとき/西田佐知子」にも似た溺れてしまいそうな甘美な香りが充満し、後半での英語詞部分では「テネシーワルツ/江利チエミ」で確立しされた日本語的英語歌唱も折り込まれ、新たなる平成歌謡デカダンの世界が見事に解け合ったブラスアンサンブルを核にしっとりと仕上がった。
 今後も多くの歌い手に唄い繋がれるであろうこの楽曲を、愛して止まなかった京都の地で亡くなった筆者に執っての人生の先輩KM氏に、梅津和時よろしく捧げるためここに記す。(se)