黄昏ミュージックvol.28 ダンス・ミー・トゥ・ザ・エンド・オブ・ラブ/レナード・コーエン
黄昏ミュージックvol.28 ダンス・ミー・トゥ・ザ・エンド・オブ・ラブ/レナード・コーエン
先日、「バー黄昏」終わりの帰りの電車で週刊新潮の中刷りに目がゆき筆者はとある事象を知ることとなった。
なんでも、草刈正雄(66)が人生何度目かの役者としての絶頂期を迎えているらしい。
超高齢化社会を迎える我国に置いて、老いをポジティブに演出することは今後重要な価値基準となるだろう。特に女性に比べ、なにかとネガティブになりやすい男性の性(さが)もあり、このような初老ヒーローを無理矢理にでも今後メディアは誕生させることだろう。
そんな時代に於いて、筆者の憧れの老い方を体現したのがカナダ出身の、詩人、歌手、レナード・コーエン。
2016年惜しまれてこの世を去ったが、82歳最後の作品となった『ユー・ウォンツ・イッツ・ダーカー』の中でさえ、そのダンディズムに衰えはなかった。
そんなコーエンの色気溢れる哀愁をよく表した84年のヒットチューン『ダンス・ミー・トゥ・ザ・エンド・オブ・ラブ』を今回の黄昏ミュージックとさせてもらう。
マヌーシュ・ジャズを彷彿させるバイオリンを大きくフューシャーしたジェニファー・ウォーンズとのディエット曲。むせび泣くその声紋はかのセルジュ・ゲインズブールをも凌駕すると敢えてここでは言い切ってしまおう。もしシネマティックな曲というカテゴリーがあるのなら、正にこのナンバーのために作られたジャンルいってもいいだろう。
無理と分かりながらもつい指標にしてしまう稀人こそレナード・コーエンその人なのである(se)