黄昏ミュージックvol.58 Yenuro Tesfa Alegne/ハイル・メルギア
黄昏ミュージックvol.58 Yenuro Tesfa Alegne/ハイル・メルギア
前回も書いたが、クルアンビン以前以降で音楽の聴こえ方が確実に違うことは如実で、特に主旋律が単音でペラペラに軽い音圧に反応する自分がいる。
ジミヘン以降のロックの主旋律は、歪みによる音の複合性が重視されたが、それ以前は、俗い云う、“アンプ直繋ぎ”が殆どで、ギター、アンプそれぞれの純正な特徴を生かした音作りを行なっていた。大雑把に云えば、ファーフ系ギターインストや和製GSサウンズなどのあれだ。
クルアンビンにそれ同様のニュアンスを感じるのは、彼らが影響を受けたタイファンクも竿系民族楽器で主旋律を奏でることが多く、国内で例えるなら三線でファンクをやる感じに近い(元・喜納昌吉&チャンプルーズのギタリスト平安隆氏は以前そんな楽曲があった)
さて、今回紹介するハイル・メルギアはエチオピアのオルガニストで、故に主旋律は和音を用いるが、彼の国の伝統である“ヨナ抜き音階”(ド・レ・ミ・ソ・ラの音階)を用いることで不思議な素朴感が生まれイナたく凝縮されたグルーブとの相性はクルアンビン同様の良質な辺境ファンクとなって立ち現れる。更に、ハイル・メルギア独自の着想としてジャマイカのジャッキー・ミットゥなどのバンドサウンドの構造を感じさせることも見落とせない。正にオンリーワンなアーティストと云うに値する人物、それがハイル・メルギアなのである。(se)