黄昏ミュージックvol.92 ラヴ・ラヴ・ラヴ/ザ・タイガース
黄昏ミュージックvol.92 ラヴ・ラヴ・ラヴ/ザ・タイガース
スタジオ盤とライブ音源で強烈に異差がある楽曲と云えば「私たちの望むものは/岡林信康Withはっぴいえんど」があまりに有名だが、当時から手練れで知られたはっぴいえんどの面々の素であるロックな一面が中津川と云う非日常で表出されたというだけで、然もありなんな出来事だと思っている。
一方、GSブームの中、No1.アイドルとして列島を席巻したタイガースの、安井かずみ&村井邦彦というこの時期の和製ポップスのトップランナー二人によるビートルズ擬の楽曲での演奏こそは異差の塊なのだ。
とは云え、当時のことドラムの回線が少なすぎてスネアの音しかほぼ録れていない代物なのだが、このワイルドなリズム隊に乗り、歪み叫び散らかす森本太郎のギターが凄まじくロック。そして今や名優として名高い岸部修三(当時)の異常に音数が多いベースラインは真性のロックベースのそれなのだ。彼がその後、井上堯之等と組みながらも役者に転向したのは、押し寄せるフュージョンブームと自身が持つロック性との折り合いが付かなかったからだと筆者は想像するのだが、果たして?(se)