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黄昏ミュージックvol.53 わすれたいのに/モコ・ビーバー・オリーブ

黄昏ミュージックvol.53 わすれたいのに/モコ・ビーバー・オリーブ

 今回は先日他界した天才音楽プロデューサー、フィル・スペクターの数ある名曲から、洋楽カヴァーとして我国でリリースした、『I Love How You Love Me』(邦題/『わすれたいのに』)を取り上げる。
 歌唱した三人娘、モコ(高橋基子)、ビーバー(川口まさみ)、オリーブ(後述します)はニッポン放送のラジオ番組『ザ・パンチ、パンチ、パンチ』(1967年開始、1971年降板)の初代ナビゲーターとしてデビューし、番組名が示すとうり、『平凡パンチ』でユースカルチャーを席巻していた平凡社1社提供の若者向け情報番組でのキャスティングだった。
 同番組で一定の認知度を得た3人を更に飛躍させようと、番組アシスタントプロデューサー亀淵昭信の発案で歌手デビューの運びとなる。
 楽曲選別は余り時間はかからず、「女性3人でしょ? それならパリス・シスターズしかないでしょ」とのことでフォル・スペクターのペンによるパリス・シスターズの「I Love How You Love Me」に決定。
 日本語歌詞を担当したのは、青島幸男の弟子、放送作家の奥山侊伸。そしてこの楽曲の魅力のほぼ全てと云っていいほどに良き方向へ変容させた小杉仁三(ありたあきら名義)がアレンジワークを担当。完全にプレンチポップスの方へ振り切る大胆なアレンジにより、カヴァーがカヴァー以上の名作として残ったと云っても過言ではない。
 さて最後に、謎の人物オリーブとは?
 オリーブは77年大滝詠一のナイアガラレーベルの初女性シンガーとして大瀧プロデュース『夢で逢えたら』で再デビューする。アーティスト名はシリア・ポール。
 その後は語るまでもないが、FM東京『ポップスベストテン』、『サントリー・サウンドマーケット』などの音楽番組のパーソナリティとしてその名を馳せた。(se)