黄昏ミュージックvol.51 Komm, süsser Tod(コム・シュッサー・トートゥ)甘き死よ、来たれ/ARIANNE
黄昏ミュージックvol.51 Komm, süsser Tod(コム・シュッサー・トートゥ)甘き死よ、来たれ/ARIANNE
1995年のテレビアニメ版から多くのファンに呪縛をかけていた、あの『新世紀エヴァンゲリオン』が、本年3月公開の新劇場版の『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』で足掛け26年の、謎、伏線を一応回収し大営団を迎えた。
斬新な世界観はもとより、バッハの『無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007前奏曲』、パッヘルベルの『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調』等、現在聴くとそのシーンが思い出される程、深く古典的楽曲が記憶に刻み付いている。
監督自身のバックボーンとなる世代的和製楽曲も“大ネタ”が故に画面と同化し大きな存在感を表出していた。
『今日の日はさようなら』、『翼をください』、『ふりむかないで』、『恋の季節』等がその一群だ。
そんな中でも突出した楽曲が、旧劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』での、鷺巣詩郎氏のペンによるオリジナル挿入歌『Komm, süsser Tod 甘き死よ、来たれ』。
よくザ・ビートルズの『ヘイ・ジュード』と比べられるが、これはあくまでもフォーマットのことで、アンサンブルはロックマナーとしてこちらの方が遥かに進化した重厚なサウンドとなっている。
監督自身による英語詞に合わせ、ネイティブである南アフリカ出身のシンガーソングライターARIANNEをメインボーカルに抜擢。周りを固めるのは、我国のロック第二世代とも呼べる手練れ達(島村英二:ドラムス、岡沢章:ベース、中西康晴:ピアノ&ハモンドオルガン、斉藤ノブ:パーカッション、芳野藤丸:ギター)。正にサードインパクト発動による甘き死を迎える瞬間と同期する神楽曲となった。
リフレインされる「無へと還ろう(It all returns to nothing)」。
しかし、旧劇場版のこのメッセージと反し、全てのエヴァンゲリオンはネオンジェネシスを呼び込むことに合意し、宇部新川駅から“有”なる世界へ走り出すことを選ぶ。(se)