黄昏ミュージックvol.49 タウン・ウィズアウト・ピティ(『非情の町』)/ジーン・ピットニー
黄昏ミュージックvol.49 タウン・ウィズアウト・ピティ(『非情の町』)/ジーン・ピットニー
“ムード歌謡”の歴史を紐解いて行く中で、希有なアレンジメントを施した楽曲に巡り合ったという話を前回記したが、要約すれば、そのジャンルの王道のようなシンガーが、90’sのロンドンを先取りしたという希少性にフォーカスした訳だ。
さて、今回は続編と云うか、“ロック”以前のポピュラーソングを探って行く中で、たまたま出てきたムード歌謡的楽曲に擦れてみたいと思う。
これに関して前回同様、自然発生的に出来上がったものだし、主人公のジーン・ピットニー自体が東の果ての異種交配音楽を知っているはずもなく、“ムード歌謡”というジャンルでゴリ押しするより、“外連味たっぷりな楽曲”という曖昧な言い回しで濁してた方がかえって曲の本質を付いているのかもしれない。
ジーン・ピットニーが日本にその名を知られたのは、多分、飯田久彦がカバーし1962年に大ヒットした、『ルイジアナ・ママ』の作者としてだろう(因みに日本語詞を書いたのは、漣健児こと後のシンコーミュージック・エンタテイメント元会長の草野昌一氏)
本国では残念ながら同曲はヒットに至らず、続く今回取り上げる、『タウン・ウィズアウト・ピティ』から彼の快進撃は始まる。この楽曲は1961年のゴットフリート・ラインハルト監督作品『非常の町』タイトルソングとしても知られ、1988年のジョン・ウォーターズ監督作品『ヘアスプレー』でも再度脚光を浴びるように、非常に映像的作品でもある。故にその辺り抜かりないブライアン・セッツァーが在籍したネオロカビリーバンド、ストレイ・キャッツも良質なカバーを残している。
夜の帳が下りる頃、街にかすかに溢れるその艶っぽい歌声。正に大人の夜の音楽だ(se)