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黄昏ミュージックvol.32 ブレスト・レリーフ/フランク・ザッパ&マザーズ・オブ・インヴェンション

黄昏ミュージックvol.32 ブレスト・レリーフ/フランク・ザッパ&マザーズ・オブ・インヴェンション

 ちょっとした訳があり、80’s最重要バンド“じゃがたら”の楽曲を聴き直している。
 複数の音楽的側面を持つ異種交配バンドであることは重々承知だが、こうしてゆっくり聴き返してみると、『よりみち』が群を抜いて面白い作りとなっている。中でも注目すべき箇所はイントロと本編の大いなる落差。
 本編は萌芽したばかりの和製ヒップホップと従来のファンクミュージックの橋渡し的ニュアンスを持つ楽曲なのだが、そのイントロとの連動が非常に説明し難いもので、誤解を恐れずに云えば実に“唐突”なのである。
 イントロだけを抜き出せば~憂いあるホーン和声がなだらかに上昇する。ボサ調のギターのつま弾きがその昇華を遠目にサポートする静寂な世界~。
 この手の響きは、じゃがたらと音楽的ディテェールがリンクする渋さ知らズも有するもので、その理由としては、メインの管楽器プレイヤーの出自、生活向上委員会に突き当たる。さらに言えばサン・ラ周辺のビックバンド系フリージャズにも多く聴かれるニュアンスだ。
 さて、そんなことを雑念しながら、不意に同様の響きを有す楽曲を思い出した。
 異種交配の正に覇者、フランク・ザッパ率いるマザーズ・オブ・インヴェンションの72年のジャズに特化したアルバム『グランド・ワズー』の終曲『ブレスト・レリーフ』。
 水面を揺蕩うかのような緩やかな四分の三拍子に、美しい和声のメインテーマが波紋のように広がる。ソロパートも実に抑え気味で無駄な主張は一切なくただ波紋を重層に重ねるのみ。
 そして、その波紋がおさまった水面には夜の帳の落ちた空にも似た深い藍が立ち現れる。(se)