黄昏ミュージックvol.22 フライディ・モーニング/クルアンビン
黄昏ミュージックvol.22 フライディ・モーニング/クルアンビン
近年、大型野外フェス出演の増加で、ビックネームの仲間入り寸前のテキサス出身の男女混合トリオ、クルアンビン。
まず、音楽以前に彼等三人三様の容姿にどうしても目がいってしまう。
いかにも“食いしん坊”キャラの太っちょドラマー(その実、タイトなリズムを叩き出す)、一点の雲もなく70年然とした長髪ロックギタリスト(ガレージ的歪みを持ちながらもギターインストバンドのつぼをしっかり押さえている)、ボブカットの黒髪が不思議なエキゾチック感を湛える美人ベーシスト(ファンクネスを持ちながもNW期の知的女性ベーシストの系譜、ティナ・ウェイマス、キム・ゴードンの流れを踏まえている?)一見バラバラに見えて演奏同様結集するとぴたっとはまる3つの個性。良質な音源もそうだが、そんな絶妙な、相性、絵面も彼等へのライブオファーが絶えない要因のひとつではなかろうか。
今回、黄昏ミュージックとして選んだのはセカンドアルバム『コン・トード・エル・ムンド』の最終トラック『フライディ・モーニング』。
メンバー3人にパーカッション、ペダルスティール・ギターをサポートに加えての長尺な演奏は、アイコンであるアジア風味のいなたいファンクとはまた違い、スローでメローなスウィートソウルミュージックのマナーにきっちり基づいたもので、BPMを有機的に変更して行く自由なグルーブは、“ロウハイ”、“へたうま”等という曖昧な形容詞では片付けられない確かな演奏力が表出した素晴らしい楽曲。表層だけ眺めれば、ジャームッシュやタランティーノのシネマで何時ぞや聴いた風の、センスのみでやっているバンドに思われがちな側面もないとはいえない彼等だが、ライブの場数並みに一筋縄ではゆかない手練でもあるのだ。
加筆/訃報が入った。敬愛するサックスプレイヤー、片山広明氏(生活向上委員会、渋さ知らズ等)がお亡くなりになった。
盟友、梅津和時氏の名作『ベトナミーズ・ゴスペル』にも負けず劣らずの一世一代の泣きのブロー、レーナード・コーエンの『ハレルヤ』の故人によりカヴァーをここに記すことで追悼とさせて頂く。
ご冥福を心よりお祈りいたします(se)
『ハレルヤ/片山広明カルテット』(アルバム『キャトル』収録)
演奏:片山広明(ts)、板橋文夫(p)、井野信義(b)、芳垣安洋(ds)