酔談
酔談 >

酔談Vol.3 ゲスト:こだま和文氏 飛び入りゲスト:園田ゆみ氏 ホスト:河内一作


酔談Vol.3 ゲスト:こだま和文氏 飛び入りゲスト:園田ゆみ氏 ホスト:河内一作


 “酔談”。見ての通り、酔って語らうこと。当然、造語である。
 酔っているがゆえの無軌道さ、大胆さ、無責任さ、自由さをそのまま気取らず飾らず実況する、それが「対談連載/酔談」の全てである。
 アダングループ代表、河内一作が東京の夜のフロントラインに初めて立った、1981年の「クーリーズクリーク」から現在に至るまで、彼が関わった店が、単なる飲食店におさまらず“自由なステージ”としての酒場の背景を演出出来えた“要”ともいえる大切な友人達を毎回招き、テーマなしのゼロベースから美味しい酒と肴の力を借りつつ今の想いを語り尽くすトークラリー。
 さて今回のゲストは、日本レゲエミュージックのパイオニアであり、一作プロデュースの先鋭的ライブシアター「音楽実験室 新世界」(2010〜2016)の不動のヘッドライナーとして6年間務め上げたダブ・マエストロこだま和文氏(以下敬称略)をお招きし、「酔談」第3回目として、なぜか?3月3日雛祭りに、泉岳寺「アダン」特別室にて開催!
 お互い、週ごとに飛び込む訃報に関しての情報交換から始まる重い幕開けであったが、嗜好がことの他合致する2人。話はいつしかお互いが大好きなあの名作映画の話へ。

◇◆◇◆◇

河内一作(以下:一作):これ(レコーダー)は放っといていいから(笑)
毎回、ただ、だらだらと飲んでるだけだから(笑)

こだま和文(以下:こだま):成る程。この企画はそういうことなんですね(笑)

一作:別段、音楽の話をする必要もないし、そうだな〜…、今日は、どこかで“食”の話はしたいかな?なんて感じで。

こだま:はい、了解しました。

一作:ここでの料理はいつもおれがチョイスするんだけど、こだまファンのペコ嬢がキッチンにいるから、今日はペコにチョイスしてもらおうか(笑)

こだま:へ〜、そうなの?うれしいですね(笑)

流石、一作さん、ここもいい空間ですね、新しい「アダン」。

一作:ありがとう。
渋谷の店の方が、こだまくん的には利便性がいいと思ったんだけど、1回は見てもらいたかったんで、今回はここにしたんだ。

こだま:うぅ〜ん、立派なお店だ。


河内一作

一作:そうそう、おれも書いたんだけど、s-kenの新譜(2017年3月21日リリース『テキーラ・ザ・リッパー』)のレコメンド文、こだまくんも書いていたね。
s-kenから聞いたんだけど、なんでも、「手書きで送られてきて驚いた」って言っていたよ(笑)

こだま:えっ?あれツールがファックスオンリーじゃなかったっけ?

一作:いや、違うでしょ、おれは彼(進行役)を通じてメールで入稿したよ。

こだま:おれの勘違いかな?
s-kenのオフィス、ワールドアパートのメアドにアクセスしたんだけど、なんか繋がらないんだよな。資料を見たら、あとはファックス番号しか記載されてないから、それなら、「手書きの方が早いわ」ってことですよ。
そんな経緯だから、デザイン的に手書きを狙っているのかとおれは思っていたんだけど。

一作:ハハハハハ(笑)

こだま:おれ、あれはキッチリ書いたよ!

一作:あのレコメンド文に関しては、実はおれにも逸話があってさ(笑)
レコメンドって普通は長く書かないものだよね?

こだま:そうですね。

一作:それは分かっていたんだけど、一応、エンドウくん(進行役)に「文字数はどのくらい?」って訊いたら、「無制限でいいんじゃないですか」って、

ラジオアダン:いや、ワールドアパートから、「無制限で」とのことでお聞きしたんで。間違えではないですよ(苦笑)

一作:ほんとに?(苦笑)
おれ、なんか一杯書いちゃった(笑)
そうしたら、「半分にしてください」って(笑)

こだま:ハハハハハ(笑)
まだ、盤の本番はきてないよね。

ラジオアダン:3月21日リリース。超久々のs-kenさんのアルバムです。

こだま:うん。レコメンドでもそこを一番誉めたもの。
今の音楽業界の状況の中で作ることが素晴らしいと思った。
今、なかなか作れないもの。内容もいいしね。
「s-kenやったな!」って思って。


こだま和文氏

一作:うん、かっこいい上がりだったよね。
おれは朝起きて掃除する時に必ず聴いているよ(笑)

こだま:凄いよ、周りにろくな話がない時で、凄く光るよね。
坂本龍一さんが癌を患って頑張って闘っているみたいだけど、おれ訃報続きですよ。
松永(孝義)から始まって、……、朝本(浩文)、俊ちゃん(中西俊夫)でしょ、で、鈴木清順監督。
俊ちゃんの訃報も気が抜けるというか、ガクっとくるんだけど、変な言い方になっちゃうけど、だんだん慣れてきちゃうと云うかさ〜。
怖いよね、訃報に慣れちゃうんだから。
誤解を恐れずに言えば、今や、「通夜も葬式も正式なお誘いがなければ行かなくてもいいか?」って感じなんです。
礼儀、義理とかから鑑みれば、誘われないから行かないなんてのは良くないのは重々分かっているんだけど、生前の付き合いにそぐわない葬式や通夜での振る舞いって、実際、違和感があって、……、一番正直な気持ちとしては、「言葉が出ない」ってことをただ言いたいだけなんだけどさ。

一作:うん、言葉は出ない。黙っているしかないってことって確かにある。

こだま:そう。
続くとなおさらなんです。

一作:こだまくんも知っている、ある人に対してコメントを出さないおれに、「薄情だよ」との声があるのも知っているんだけど、おれの感覚として、言葉を発すると嘘になりそうな気がして、……、まあ、それで黙っているんだけどね。

こだま:うん。
ただ、全く逆に思いつくことを次々とツイートしてしまうこともあって……。
朝本の時がそれで、……、自分との距離かな?見舞いにも行っているし。
それにしてもここまで続くと、……、その故人に対してではなく、訃報そのものに対する自分の気持ちをつい呟いてしまったりするんです。
過去、自分が訃報に突き当たった時に発した言葉を考えると、その故人とどれだけ親しかったか、だとかさ、自分にとって都合のいい想いが多い。
乱暴に言えば、自慢話になっちゃう。「おれは凄く、彼と仲良かったんだぜ!」みたいな。
……、それはそれでいいのかもしれないけど、続くとね、「なんだかな〜」と虚しくなってきて、段々言葉が減る訳だ(苦笑)

一作:うん、よく分かるよ。

こだま:自慢話になってしまうことを決して否定しているんじゃなくて、昔ながらのいい通夜って、仏を前にして、その人のことを皆で語り合って酒を酌み交わす訳で、

一作:新世界で出していたフライヤーに、「命日カレンダー」ってタイトルでおれはエッセイを連載していたんだけど、

こだま:うん、やってた、やってた。

一作:あれって、今、こだまくんが言ったことを書きたかったんだと思うんだ。
通常の、通夜感覚的に、「あいつはこんなやつだったよな〜」なんてのを話にしたかったんだけど、その対象が非常に自分と遠い、映画スターやミュージシャンになっていった……。
近い人ってなかなか書くのは難しいからね。

こだま:うん、難しい。
虚しさは常に付き纏って、近くて遠い、つまり、一緒に仕事をして、一時期、凄く濃密な関係を築けた人でも、その人がある分野を代表するような著名な方だと、なかなかその後も近しい関係を維持することは難しいものです。

ラジオアダン:以前、インタビュー書籍で語った池田満寿夫さんとの関係等がそれなんでしょうか?

こだま:うん。そうかもしれないね。ああいう想いもある。

一作:清順さんもそんな感じだったのかな?

こだま:うん、……、そんな感じもするね。

一作:映画「ピストル・オペラ」の音楽をやった時って、清順さんとしっかり緻密に打ち合わせして進めて行ったんだよね?

こだま:しっかりじゃないね(あっさりと)
二人の間に音楽プロデューサーという人間が映画の場合入るから。

一作:ああ、成る程。

こだま:最終的な段階、映像もこっちの音楽も大体見えてきた時にお会いして、まあ、聴いてもらって。膝を付き合わせてと云うか、そんなミーティングが1回あって、

一作:ってことは、音楽プロデューサーがこだま和文の音楽が好きだった訳だ。

こだま:いや、それも違って、正直なことを言えば、……、主演が江角(マキコ)さんだったよね、彼女がエゴラッピンが好きで……、それで、エゴのよっちゃん(中納良恵)の既にヒットしていた曲、「サイコアナルシス」を使いたいっていう音楽プロデューサー側の思案から始まったプロジェクトだったみたい。
だから、音楽プロデューサーや監督との間で、音を作る側が感じることなんてありふれた話で、坂本龍一さんも似たようなニュアンスのコメントをしていたけど、要は、なかなか音楽の作り手がイメージした通りには映画の中では運ばないということ。極端な話、100曲書いたとしても90曲はいらないみたいな、そんなことにもなりかねない。
おれ自身、映画は2作しかやってないけど、「ちょっと懲りた」ってのがあって(苦笑)
あと、当たり前に聞こえるかもしれないけど、相当好きな映画でやらないとダメです。だけどその出会いがまた難しい。

一作:成る程。
でも、日活ニューアクションの頃のニュアンスなんて、こだまくんとばっちし合わない?

こだま:そりゃ〜そうなんだけど……、……、
もっと正直なことを言えばさ〜、前述したように自分の好きな映画でやりたいんだけど、その自分の好きな映画って、極めて音楽の使用頻度が少ない、ガハハハハ(爆笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)

ラジオアダン:そう思うと、お二人が共通して好きな「ゴットファーザー」なんて作品は奇跡とも云える映像と音の幸福な出会いですよね。

こだま:あれはもう映画として凄いから。
つい最近、ハリウットの業界人から集めたデーターでのフェイバリット映画の1位って何だと思う?

一作:「ゴットファーザー」?

こだま:そう。

一作:よく出来てるもの。
あれは3作全部で見るとより一層、「成る程!」って思うよね。

こだま:うん、それに関してもシリーズとしてのフェイバリットだったはず。
あれもシリーズが進む中でいろいろあったみたいですね。キャスティングの段階で制作サイドがマーロン・ブランドを敬遠したり、ロバート・デ・ニーロがパート2しか出演しなかったのもいろんな事情があったみたいで。
まあ、基本、お金の問題なんだろうな。
1作目ってのは予算があまりなくても、「作りたい!」という強い熱意を持って挑んでくれる人達が多数いる。で、いざ、“当たった”となると悲しいかな金銭的問題が浮上する。
お金と言うとつまらん話になっちゃうけど、要はああいう凝縮した映画1本に付き合うことの大変さに対する対価ということですよ。

一作:パート3でロバート・デュバル、

こだま:弁護士ね

一作:うん。いなくなるものね。

こだま:あの人、凄く大事な役なのに(笑)

一作:ハハハハハ(笑)
うん。

こだま:それこそ1作、1作の大変さだと思う。「また、あれをやるのか……」という(笑)

◇◆◇◆◇

 こだま、一作とも駆けつけ一杯のビールの勢いで、重い訃報から映画作品と役者の微妙な関係に一旦帰着したところで、ふっと思い出した。
 こだま和文はリアルな役者、そして演劇の現場を知っているのだ。
 普段、本人はそのキャリアには触れないが、著書「空をあおいで」中、秀逸な一篇の随筆として役者稼業のリアルな心情を確かに残している。
 不肖、わたしがそんな軌道に2人を誘導した先に、これまで誰も聞いたことがない2人に執っての演劇との初期衝動が語られる。

◇◆◇◆◇

ラジオアダン:映画といえば、以前、林海象監督作品(『二十世紀少年読本』)にこだまさんは出演されていましたね。

こだま:あれはエキストラみたいなものだから。

ラジオアダン:では、本格的にこだまさんが役者をやったといえば、宮沢章夫さんのお芝居(『砂の楽園』)ということになりますか?

こだま:やった。おれ自身が、「よくやったな〜」と今でも思うもの(苦笑)

一作:芝居やったんだ?

こだま:1ヶ月拘束ですよ。20以上の舞台があったんじゃないかな?

一作:へぇ〜、よくやったね。

こだま:おれ自身がそう思う(笑)

一作:こだまくんのMCでの、「寒男は〜」みたいな感じで台詞をしゃべった訳?

こだま:……、うん、まあ、そういうことですよ。
役柄があってさ。

一作:ミュートやっていた若い頃?

こだま:いや、終わった後。
でも、おれ、演劇は子供時分からやっていたから。

一作:へぇ〜、そうのな?
それ知らないな〜、インタビュー本にもその話入ってないよね。

こだま:実は幼稚園で舞台デビューしてるんだよね。
ガハハハハ(爆笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
子役だ!(笑)

こだま:うん、学芸会みたいなものだけどね(笑)

ラジオアダン:ぼくは、インタビューでお訊きした子供賛美歌隊での合唱が、舞台に立った最初だと思ってました。

こだま:実は演劇なんだよ(笑)
「一寸法師」ね。

一作:一寸法師の役?

こだま:うん。
衣装をちゃんと着て、

一作:よく幼稚園時代のことを細かく覚えているよね。

こだま:写真が残っているから。

一作:成る程。
で、やる気満々でやってたの?

こだま:そこまでは覚えてないな。
中学くらいからはよく覚えているよ、演劇部だったから。

一作:えぇ、そうだっけ?吹奏楽部じゃなかった?

こだま:倶楽部みたいなもんで、吹奏楽部とはまた別個に入ってたの。
文化祭的な時期に、「『父帰る』をやろう!」なんてなって集中的にやる感じ。
なんか、思えば、おれ出たがりだったんだね(笑)
こどもの頃は、おれもっとひょうきんだったから(笑)

一作:ひょうきん!?
ガハハハハ(爆笑)
なんか分かる分かる(笑)

こだま:ひょうきんだったの、もの凄く。

一作:こだまくんのステージしか知らない人は分からないかもしれないけど、おれ達はなんとなく分かるよ。一寸法師の台詞は覚えてるの?(笑)

こだま:それはないな(笑)
あれはなんか、踊りみたいなことだったと思うんだ。カエルとお姫様がいてさ〜、

一作:一種のミュージカル?

こだま:なんかそんな風な。
台詞らしい台詞はなかったんじゃないかな〜?
写真を頼りに思い出そうとするんだけど、流石にもう無理。
1回ツイッターにその写真を上げたけど、すぐ消した(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
急に恥ずかしくなって?

こだま:うん、なんか……、

一作:おれの場合は中学1年の時に、学芸会で「大黒様」をやったりしたかな。
あと、2年の時に、「無心」っていう、……、山口県って妙に文化度数が高かったんだ。
「無心」は天狗と石工(いしく)がいて、石工が無心で石を打っているんだけど、今でいうところの彫刻家みたいなものかな?
そこへ天狗が現れてちゃちゃを入れ始める。ちゃちゃは相当長く続くんだけど、石工は一心不乱に石を打ち続けて、最終的に天狗は根負けしてどこかへいってしまうという話なんだ。

こだま:いい話だね。

一作:その中で、おれは天狗の役をやったの、ガハハハハ(爆笑)

こだま:ガハハハハ(爆笑)
石工じゃなくて天狗なんだ(笑)
でも、重要な役柄だね。

一作:そうそう。でも学芸会だからね(笑)

◆◇◆◇

 ここで一作が仕込んだタイムボンブが炸裂する。
 近年、こだま和文が常打ち箱にしていた、西麻布「オリジナル新世界」のコアスタッフ、園田ゆみ氏(以下敬称略)が昼間の照明業務を終えて急遽登場!
 女性の登場で場が華やぐと共に、話題も、ゆみが常時観覧するこだまツイッターに頻度高く登場する自作料理の話へと流れ込む。

◇◆◇◆◇

こだま:あら〜、ゆみちゃん!!

園田ゆみ(以下ゆみ):ハハハハハ(笑)

一作:ゆみちゃんも話に参加させよう(笑)

ゆみ:わたしはお二人のお話を聞いて飲んでいるだけでいいですよ(笑)
こだまさんのツイッターはよく拝見させていただいています。

一作:自作の料理の写真を上げたりしているんだよね?

こだま:うん、そう。

一作:飲みながら作ったりもするの?

こだま:ええ。

一作:あれはいいよね、楽しい。

こだま:「今晩は何を食べようかな?」くらいの時からキッチンで飲むのがいいんだよ(笑)
決めてかかるときも勿論あるんだけど、まずは冷蔵庫の中の野菜を見るんだな。その中で、一番最初に食べないといけないものを判断する訳。でかいキャベツがあったりさ(笑)

一作:凄く分かるよ(笑)

こだま:大根があったりさ、それを優先するしかないんだよな。
じゃがいもなんてのは放っとけるけど、「小松菜とほうれん草がダブってるな」
みたいな(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
そうそう、じゃがいもは放っとける(笑)賞味期限が長いからね。

こだま:大根も冷蔵庫に入れときゃまあまあ保つんだけど、葉物系だよな、問題は。
「レタスと白菜両方」、……、……、
まあいいや、そんなこと(引っ張った割に超あっさりと)
そんなこと考えながらまずは飲んじゃうんです。
特に出汁を取る時なんて、味見するじゃん、それでもう十分飲めちゃう(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
酒飲みだね〜(笑)
出汁ってなんの出汁?

こだま:昆布と鰹。あと、昆布と煮干し。これを使い分けるんだけど、

一作:煮干しって、“いりこ”のこと?

こだま:うん、いりこ。使い出したのは最近なんです。
多分、讃岐うどんや尾道ラーメンが切っ掛けだったと思う。

一作:おれは出身が瀬戸内だから、シェアは鰹よりいりこのほうが広い訳。
今でも、買うときはなるべく瀬戸内のものを選ぶ。

こだま:鰹節とはまるで違うものだよね。

一作:うん、デリケートなんだよね、いりこは。

こだま:うん、すっきりしてる。
鰹節は一種の薫製感があるんだけど、……、まあそれがよさでもある。
いりこは、「生臭いんじゃないだろうか?」と思っていたけど、全然すっきりしている。
あれ、ポトフとか相性いいよ。

一作:ちょっと空煎りして使うといい。そうすると、さらに生臭さが抜ける。

こだま:手間としたら、前の晩から水に浸けとかないといけないんだよな〜、昆布と一緒によ。

一作:麦茶を入れとく容器があるじゃん、あれに水を注いで昆布といりこを入れて冷蔵庫に入れておくんだ。そうすると手間をあんまり感じないじゃん。
ところで、福井県ではどんな出汁が多かったの?

こだま:昆布と鰹。

一作:他は?

こだま:他はない。

一作:飛魚は?

こだま:九州の?

一作:うん、あれ、今人気あるよね。

こだま:おれはいりこで十分だな。
九州の人達や、あと島根も飛魚は使うね。

一作:そうか、飛魚は福井までは届かなかったんだね。

こだま:うん、なかった。あれは島根くらいまででしょ。

一作:結構、前から、こだまくんとは食い物の話は合うんだよね(笑)

こだま:うん、おれも一作さんもザックリ言えば、同じ西日本だしね。

一作:おれは料理屋やってるから味にうるさいのはあたりまえのことだけど。
こだまくんは味のことよく知ってる。

こだま:いやいや。
ガハハハハ(爆笑)

一作:福井は地理的に京都の文化も当然入ってきているもんね。
そういえば、こだまくんの本の取材で福井に行った時に入った福井駅最寄りの蕎麦屋がよかった。
おれ、2日続けて行ったんだけど、最初は蕎麦を食って、翌日、中華そばを食ったんだけど、この中華そばが旨かった。
ラーメンじゃないよ(ゆみに向かって)、中華そば。
なんていう店だったかな?もう一回行きたいんだけど。

こだま:いい旅だったんですね。


左:園田ゆみ氏

◇◆◇◆◇

 味に一家言ある2人の味覚議談の果てが、なんと、こだま和文の故郷福井。その福井から上京したこだま青年を、「まるで空想のパリのようだ」と感嘆させたのが、吉祥寺の街だった。
 遡ることその2年前、図ったかのように、一作もその街を青春と云う名のもとに徘徊していた。
 そして、その後、武蔵野文化圏を離れた2人の磁場は、原宿〜霞町に移行。
 そこでの、日本レゲエ創世記のメモリーを経て、遂に本日最大のこだま格言が飛び出す。

◇◆◇◆◇

ゆみ:先日のクアトロのこだまさんのライブに行ったんですけど、

こだま:ありがとう

一作:おれも行ってたよ。

ゆみ:そうみたいですね、お会いしたかったんですけど……。
わたし、98年に上京してきたんですけど、その時のわくわくした気持ちをあのライブで思い出しました。

一作:いいね〜、一杯喋ってもいいからね(笑)

ゆみ:えっ???
ハハハハハ(爆笑)
いきなり来てすいません。
お酒があるところならどこまでも(笑)

一作:おれは、上京すぐの街というと吉祥寺。
あの頃の吉祥寺はよかったよな〜。

こだま:うん。
サンロードに易者さんがいたんだよ。
今のマクドナルドの少し内側、昔、三浦屋があった、……、
おれ、この易者のこと今度ツイートしようかな?

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

こだま:いや、細かい人はね、そういうのちゃんと拾ってくれたりするんだから。
懐かしいな〜、映画のワンシーンみたいな映像が今でも浮かぶよ。
易者なんだけど、一見、大学教授みたいなさ。髪が白髪で長くて、眼鏡をかけていて、髭もちょっとはやしていて、三揃えのスーツを着こなして。
和装の易者じゃなく洋装の易者。その人のことは時々思い出すね。
当時もう、6〜70歳くらいで。

一作:あの頃って、「新宿から流れて吉祥寺」な感じってあったじゃん。変な奴が一杯いたよね。
それは三鷹台に住んでいた時の話?

こだま:そう。

ラジオアダン:お二人は、吉祥寺から原宿、霞町と共通の拠点移動をしているみたいですが、時期的には約2年程のラグがある感じでしたっけ?

一作:そうだね、2年違うね。

こだま:でも吉祥寺はそこそこ被ってません?
どこかでかすっていたんだろうね。

一作:絶対にかすってるね(笑)

こだま:おれにとって、河内一作って人は幻の人なの(笑)
昔から、オーバーヒートの石井(志津男)さんからその名前を聞いたりしていたんだけど、とにかく謎の人物だった。
皆から聞くんだよ、「一作がさ〜」って(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
石井さんはあの頃、クリーズクリークの近所で事務所をやっていたから。
おれ、三木(哲志)くんと一緒に「ロッカーズ」の映像を借りに行ったもの。
三木くんはおれより石井さんとは古かったはずだよ。

こだま:あの頃はあの頃でレゲエのセクションと云うか、……、いろいろあったんだよ。

一作:あの頃、レゲエシーンにはそれなりに楽しませてもらったけど、やっぱりラスタ帽だけは被りたくなかったね。

こだま:今、一作さんが言ったことも含めて、皆思い入れがあるもんだから。しかし、周りを見ればそんなに知られたジャンルとはいえないし。
そうすると、「レゲエに関してはおれだ!」とか「レゲエはこれが本物だ!」とかって奴が出て来るんだ。

一作:ガハハハハ(笑)
いたいた、一杯(笑)

こだま:その熱い想いはシーンを活気づかせるにはいいことだったのかもしれないけど、「おれはおれでやるぜ」ていうのが石井さんで、他にもザイオン系やらいろいろあったんだよ。
結局、パンクでもニューウェーブでもそういうことってあるでしょ?「だれそれはだめで、だれそれはいい」なんてのが。
つまり小さな村社会ってのはね、目立ってくると叩くんだ。

一作:それダメだよな。

こだま:つまらん。あれ、やっかみなんだよ。
写真や絵の世界でもそのつまらんやっかみが今も続いている。

ラジオアダン:先日、s-kenさんに“東京ソイソース”について伺ったんですが、あの80年代後半の完成形とも云えるミュートビートの芝浦インクのライブでも、「ボブやれ〜〜〜!!」なんてヤジが飛んでいたそうですね。

一作:おれは大好きだったけどね、ミュート。

こだま:レゲエの中で嫌われながら。みんなつるみがあるからね。
じゃ〜、今度はヒップホップのシーンに少し顔を出すと、こっちはこっちでつるみがある。
「それをやめようぜ」というのがソイソースだったんだよ。

ラジオアダン:至極納得です。

こだま:otoちゃんがECDを誘ったり、いとうせいこうさんを呼んだり、ランキン(・タクシー)も出るわ、あれはもの凄くいい環境を作ったんだね。
あれがあの時代の最後のクリエイションだったんだな。

一作:うん、88年あたりで終わりだよね。

こだま:トマトス、s-ken&ホット・ボンボンズ、じゃがたら、ミュートビートだもの。今、自分が客で見てみたいよ。
まあ、その中でもいろいろあったけどな(笑)

一作:とはいえ、こだまくんは、結構、皆と良好なんじゃないの?

こだま:おれはクラゲみたいな人間だから(笑)

一作:ガハハハハ(笑)

こだま:最近のキーワードは“比べない”だから。
「なにごとも比べない」というのが最近の信条。

一作:正にそう。

こだま:なにごとも比べない
比べることがダメ。いいものは、「いいね〜」って。
いいじゃない、ねぇ、ゆみちゃん。
そういう時だけふる(笑)

ゆみ:はい(笑)

一作:最近、岡本太郎の本を読んでいて、こだまくんが今言ったことと同じように綴られたものを受け止めている。凄くいい信条だと思うよ。

こだま:ここまで一応生きてきて、今一番思っていることが“比べない”ってことだから。

一作:うん、それ凄く分かる。

こだま:大体、やっかみやだったり、……、
ただ、まあ、それがモチベーションになる時期もあるんだけどな。

一作:だれがどうしたこうしたは、もう本当にいいのよ。
おれなんて過去にやらかした恥ずかしいことなんて一杯あるよ(苦笑)
それもね、もういいのよ。「自分の世界だけで行こう」という気持ちが今凄くあるね。
正直に言えば新世界もやらかした方に入るんじゃないかな?一人でいるときなんていろいろ思い出して、「恥ずかしい……」ってなるもの。

ゆみ:へ〜……。

一作:だけどね、それもまたいいんだよ。
ねぇ、ゆみちゃん(笑)
こういう時だけふる(笑)

ゆみ:はい。
ハハハハハ(爆笑)

◇◆◇◆◇

 それにしても、これほどウマがあう2人が、2010年のオリジナル新世界オープンまでサシで会話を交わしたことがなかったなんて、神様のプログラムなんてものも随分と当てにならないものだ。
 そんな、神のエラーをよそに出会った約束の地、新世界での凝縮した6年間の黄金の日々。
 今夜も、やはり話はそこに辿り着く。

◇◆◇◆◇

ゆみ:こだまさんの新世界でのターンテーブルライブは本当にお芝居を見ているように感じられて。
元々、働いていたお店がシャンソンのお店だったので、

ラジオアダン:青山「青い部屋」ですよね。

こだま:戸川(昌子)さんの?

ゆみ:はい。
こだまさんの新世界でのライブって、シャンソンのように、「1曲の中にストーリーがある」って感じで、凄くお芝居を感じて感動してしまったんです。

一作:バンドが再始動して、ターンテーブルライブは今はあんまりやってないの?

こだま:うん。

一作:あれはあれでいいんだけどな〜、こだま劇場な感じで。

こだま:自由だからね。責任も全て自分だけど。
あれこそ新世界があってのものだったかもしれないね。

一作:かっこよかったよ。
「NAMAHAGE」とか最高だった!

こだま:新世界だから出来たことなんだよ。

一作:3/11の後にさ、紙袋をエレファントマンみたいにこだまくんが被ってさ、……、かっこよかったな〜。それで、「NAMAHAGE」をやる訳でしょ。

こだま:ガハハハハ(爆笑)

一作:あの手の、敢えてチープなパフォーマンスって、80年代のニューウェーブ絡みでは一杯あったよね。あれはあれでおれは好きだったな。

こだま:そうです。
俊ちゃんのウォーターメロンだって自作の紙のお面付けて(笑)

一作:専業でなく、アートと音楽の融合なら、「素人でも出来ちゃうかも??」って世界だよね。

こだま:やっぱ新世界は、張り合いがあったな(しみじみ)

一作:だからおれからしたら、「形は違えども、そういう場を作らなくちゃいけない」と常に思ってはいるんだけどね。

こだま:そういうおれを、一作さんは今でもこうやって誘ってくれる訳だから。
そういう空間に対する感性を持ったクリエーターが最近は少ないよね。
過去で言えば、ピテカン(トロプス・エレクトス)、インク(スティック)もおれにとっては非常にエポックな箱だったけど、あの時期はバブルの後押しがあったから。新世界は全然違うじゃん。一作さんは本当、「ギリギリで、どうなるか分からないけどコアにやろう」という気持ちがひしひしと伝わってきたから。
でも、70年代の人達は、皆それをやって来たんだよね。それを2000年代に入っても一作さんはやったんだよ。

一作:やらかしちゃったね(苦笑)
でも、80年代のクーリーでライブをやったアーティストが今では有名になっていて、新世界に出演した時に、「新世界って席も少ないし、座れないし」なんて言うんだけど、おれはそんなクレームは一切受付なかったの。
だって、「あのクーリーの時の俺たちって、そんなことでライブやってなかったじゃん」ってことだよね。
歳をとろうが、「せめて2時間くらい立ち見で我慢しろよ」みたいな。
そんなおれの考える新世界の価値を最初に誉めてくれたのがこだまくん。
凄く嬉しかった。

こだま:だっていいもの。

一作:ここの場所には、「“るつぼ”というものが当たり前にあるんだよ」ってことを皆に理解してもらいたかったんだ。

◆◇◆◇

 新世界でのこだま和文のレアアクトの事柄に一つ一つ触れて行けば、朝になってしまう。
 その断片を急ぎ足で過ぎるには、ある程度の酒量も必要となる。そして、そんな行為に陥った2人の言動がやや右や左に揺れ出す。この後の話の飛び具合はかなり酔いがまわっている証拠だ。
 だが、その話の雲行きの怪しさが、忘却の彼方に置き去りにされていた事象へ行き着くトリガーともなる。
 キーワードは、“バイトリーダー”。
 ???

◇◆◇◆◇

一作:ゆみちゃん、きみは今の新宿ゴールデン街とか詳しいと思うけど、やっぱり今でもゴールデン街で働く人達って文学とか好きなの?

ゆみ:どうなんでしょうか?
わたし自身はゴールデン街でのひょんなご縁で、田中小実昌さんを知るようになったりとか、

一作:あの人は歩いていてバスが来ると無作為に乗ってしまうらしいね。でも、おれその気持ちよく分かるよ。

ゆみ:小実昌さんってテレビに出るくらい有名な方なんですよね?
でも、わたしの生まれ育った宮崎県は映る局が限られていて全然存じ上げなかったんです。

一作、こだま:ガハハハハ(爆笑)

ゆみ:知ってからは、随筆ですが、1冊だけ読みました。

こだま:東大出身だよね?

一作:東大、東大。
全然行かなくて除籍になっちゃうんだけどね(笑)

こだま:おれがはじめてゴールデン街に行ったのは、映画「集団左遷」の音楽を担当していた時。なにかっていうと行く店があって、映画人のたまり場的な店。
その前は新宿だと、しょんべん横丁の方が行く頻度が俄然高かった。しょんべん横丁といえば、マイルス(・デイビス)の命日に、梅津和時さんとたまたま出くわして。
そのことは、未だに梅津さんは語ったりしてくれているんだよね(笑)
まあ、それはそれでいいんだけど、

一作:そう?その話面白いよ。もっとしてよ。

こだま:それだけだよ(あっさりと)

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

こだま:マイルスが死んだ日。以上(きっぱり)

ラジオアダン:梅津さんとこだまさんって、結構深い縁がありませんか?
生向委(生活向上委員会)で、こだまさんの親しかった篠田(昌已)さんの兄貴分的存在で、s-kenさんの「ギャング・バスターズ」でもホーン隊にご一緒に名を連ねたりして。

こだま:うん、でも最近は息子の方が近しいかもね。
彼(梅津旭)はジャマイカ一丁目バンド(現JAMA-ICHI)ってレゲエバンドのドラマーだから。

ラジオアダン:ええ、知ってます。非常にいいドラマーです。

こだま:うん、そうなんだよ。
飲み屋もやっているんだよな。

一作:えっ、どこでやってるの?

こだま:阿佐ヶ谷。

一作:なんか阿佐ヶ谷とか一緒に行きたいね!(笑)

こだま:あさがぁ〜やぁ〜〜〜!(相当アバンギャルドなイントネーションで)
ガハハハハ(爆笑)

一作:じゃ〜、次回は阿佐ヶ谷でこの対談のVol.2やる!?
ガハハハハ(爆笑)

こだま:そうやって、すぐ一作さんは飲みの方向へおれを持って行く。
ガハハハハ(爆笑)

一作:阿佐ヶ谷はどっちかっていえばこだまくんのテリトリーでしょ?(笑)

こだま:梅津旭くんの店は「ドローバー」っていう店だね。
あの辺はあの辺でまた苦い思い出がある……、

一作:ハハハハハ(笑)
あと、ゆみちゃんワールドでゴールデン街ツアーもいいね。

こだま:ゆみちゃんは、お酒を飲む店にすぅ〜っと入って行けるセンスがあるよね。

ゆみ:どうなんでしょうか?
でも、“オーナーさんが物書き”というのには縁があるかもしれないですね。戸川さんしかり、一作さんしかり。

一作:思えばそうか。

ゆみ:あっ、そうだ、
今度こだまさんにお会いしたら訊こうと思っていたんですけど、ツイッターで、「以前、工藤冬里さんといっしょにバイトをしていました」って呟きましたよね?

こだま:うん書いた。あるよ、やったこと。

ゆみ:バイトリーダーが工藤冬里さんだったとか。

こだま:そうなんだよ(笑)

ゆみ:実は、去年の年末にリニュアルした新世界で工藤さんのイベントをやったんです。

こだま:おお、そうか(笑)
ゆみちゃんはバー?

ゆみ:その時は照明やら受付やらで。

こだま:工藤冬里、面白いでしょ?
おれ昔、彼のこと、「かっこいいな〜」って思ってたんだよ。

ゆみ:今、器を作られているんで、舞台の前に陶芸作品を置いて、最後にはそれを売っていました(笑)

こだま:そうそう。愛媛の窯元なんだよ。

一作:ガハハハハ(爆笑)
今は愛媛にいるんだ。

こだま:元々はジャズピアニストなんだけど、というか、オルタナティブピアニストと云った方がいいのかな?おれ、彼のこと大好きでさ。彼も篠田くんの関係で更に知り合ったと思う。
おれが松山でライブをやった時もわざわざ来てくれてね。

ゆみ:で、バイトはどんな内容だったんですか?(笑)

こだま:おお、おれとピアニカ前田とな、

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

一作:それいつの話よ?

こだま:随分昔ですよ(笑)
関越自動車道が出来た時。

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

こだま:年代を知りたければ、“関越自動車道が出来た時”で検索してください(きっぱり)
バイトの内容は、関越の、……、つまり路肩の掃除ですよ。

一作:へぇ〜、

こだま:車に乗って移動する訳ですよ。
そのバイトリーダーが工藤冬里だったの!

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

こだま:おれを誘ったのが前田だったの!(笑)

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

こだま:だから、おれにとってはその時からずっと工藤冬里くんは偉い人なの!(笑)

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

一作:永遠の上司?(笑)

こだま:上司、上司!!

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

一作:それは凄いね!(笑)

こだま:工藤くんは変わった人だったろう?(ゆみに向かって)

ゆみ:ハハハハハ(笑)

こだま:全然しゃべらないで、
こんな(日本固有の幽霊のポーズをとる)感じの人だろ(笑)
でも、すげぇ〜チャーミングな男なんだよ。
話しかけづらくて、話してもあんまり言葉は出てこないんだけどさ(笑)

一作、ゆみ:ガハハハハ(爆笑)

◆◇◆◇

 正に想定外な、レジェンドミュージシャン2人の過去が暴かれ一気に場はスパークしたが、盛り上げれば沈むのが自然の摂理。    
 この後、深酒に達しつつある2人の口調は徐々にまったりと。
 そして、楽しかった今宵の宴も徐々にフェードアウトへ向かう。

◇◆◇◆◇

一作:今、割と葉山にいることが多いんだけど、ミュートビートとこだまくんの音源は全部店に置いてあるから、聴きたい時に聴けないんだ。だから、最近はユーチューブで聴くことが多い。

こだま:どのくらいの感じで行き来してるの?

一作:大体、半分ずつかな?

こだま:いいペースだね。

一作:(急に)いいね、いいね、かっこいいね(BGMでかかった、西内徹バンドでのこだま和文のソロパート部分を聴きながら)
いいな〜、ミュージシャンは皆に、「かっこいい」って言われて(笑)
店をどこまで作っても、「かっこいい」なんて言われたことないよ(笑)

こだま、ゆみ:ハハハハハ(笑)

こだま:「いい店ですね」ってのは、その場合、「かっこいい」の同義語でしょ。
「あそこのオーナーがいいんだよね」って、皆言ってるよ(笑)

一作:今回、ゆみちゃんを飛び入りで呼んでよかったね。

ゆみ:ハハハハハ(笑)

こだま:ゆみちゃんはまだ若いから、これからいろんなことがあるんだろうね。

一作:ねっ。
あるある、一杯ある。

こだま:ゆみちゃんは、久しぶりに会っても可愛らしくて本当にいいよな。

ラジオアダン:そういえば、(松竹谷)清さんの還暦ライブの正式なリリースはこだまさんにもまだ届いてないんですか?

こだま:知らない。渋谷でやるってとこで止まっている。
(後日、6月9日(金) 渋谷 O-nestに決定!)
(突然)今、一作さんは何の曲を聴きたい?

ラジオアダン:多分これだと思いますよ(PCで『恋のバカボンド/s-ken:トランペットこだま和文』を即かける)
「恋のバガボンド/s-ken」ユーチューブで試聴可能です

一作:いいね!これ最高!

ゆみ:s-kenさん?

こだま:うん、s-ken(笑)

一作:この曲も、朝、掃除の時に聴く曲(笑)

こだま:ハハハハハ(笑)
いいね(聴き込みながら)

ゆみ:s-kenさんのヴォーカルって魅力的ですよね。

こだま:うん、そうだよ。

ゆみ:わたしはこだまさんの唄も大好きですけど(笑)

こだま:嬉しいね(笑)もう少し励みますよ。

一作:このトランペット最高だよね。(聴き込みながら)
かっこいいんだよ、本当に。

こだま:ここのペットの部分は、実はおれが作ったフレーズなんだよ。
♪お〜い〜で〜 恋のバ〜カボンド〜♪(曲に合わせてはもる)
いいね〜(笑)

一作:今日も結構話したね。
今度はおれが国立に訪ねて行くからさ。

こだま:はい、待ってます。

一作:その時は、たまには吉祥寺で飲もうか?

ゆみ:えっ、それわたしも行っていいですか?

一作:いいよ。

こだま:来てよ、ゆみちゃん(笑)
今度、ゆみちゃんがいる新宿の店にもふらっと行くよ。

ゆみ:こだまさんがお店に来たらめちゃくちゃ緊張しちゃいますよ(笑)
毎週月曜日は新宿にいます。昭和歌謡のお店(新宿『夜間飛行』)です。

こだま:へ〜、そうなの?
そこはお客さんも唄えるの?

ゆみ:残念ながらお客さんは唄えないんですけど、ママがセレクトした歌謡曲と、昭和の映像、それこそ「時間ですよ」とかが流れていたり。

こだま:へ〜。

一作:(突然)今週の「バー黄昏」(一作プロデュースの渋谷の週末限定DJバー)のDJはだれ?(進行役に向かって)

ラジオアダン:インターFMのナビゲーター、ジョージ・カックルさんです。
そうそう、ジョージさん、実は、元新宿「開拓地」のスタッフだったんですよ。

こだま:えぇぇ〜〜〜〜!!おれ、大昔、ライブやったような気がする。
瀬川(洋/ex.ザ・ダイナマイツ)さんとやってるかもしれない。
開拓地!?!?ヤバいね!

ラジオアダン:こだまさんは(川上)シゲさん(ex.カルメン・マキ&オズ他)に連れられて、

こだま:うん。
へ〜、ホント??そんな人がかけてるんだ。
開拓地、ウッディーな店だよ、ウッディーなログハウスみたいな(笑)

一作:流石にその店は知らないな〜。
名前からして凄いね(笑)
で、こだまくんの今度のライブはいつなの?

こだま:近々では、5月14日の立川「A.A.company」での、KODAMA AND THE DUB STION BANDのワンマンですね。
※詳細/

一作:飲みの場ばかりじゃなくて、今度はライブ会場に会いに行くね。
最後に告知も出来たし、酔談の第2弾もやるというところで、今日はお開きにしようか?

こだま:そうですね。
本日はごちそうさまでした。

◇◆◇◆◇

 再会を約束して幕が降りたダブマエストロとの酒宴。
 今後も限りなく続くであろう2人の会話と言う名の交信。
 「応答願います」。
 こだま和文がMCの常套句として使うこの言葉は、一作の随筆にもよく登場する一節だ。
 「応答願います」。
 次回、このどちらからかのコールにレスポンスする場所は、吉祥寺?阿佐ヶ谷?新宿?それともどこかの地方都市?はたまたアセンション後の新世界?
 だが、そんな先のことは誰も分からない。
 なぜなら、人生の殆どの出来事なんて酔っぱらいが酒場で夢想したことを、神様が空模様に沿って暇つぶしにチョイスしているだけだから。

 とぅ・びー・こんてぃにゅーど

@泉岳寺「アダン」

テキスト、進行:エンドウソウメイ
写真:門井朋

●今回のゲスト

PhotoⒸ門井朋
こだま和文/プロフィール
1982年9月、ライブでダブを演奏する日本初のダブバンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム「QUIET REGGAE」から2003年発表の「A SILENT PRAYER」まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして「IN THE STUDIO」、2006年には「MORE」を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム「チャッピー・ドント・クライ」等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。
近年、DJ YABBY、KURANAKA a.k.a 1945、DJ GINZI等と共にサウンドシステム型のライブ活動を続けているが、2015年 12月、KODAMA AND THE DUB STATION BANDを再始動。メンバーは、こだま和文(tp.vo )、AKIHIRO(gr)、コウチ(bs)、森俊也 (dr)、HAKASE-SUN (key)。
また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。
著書に「スティル エコー」(1993)、「ノート・その日その日」(1996)、「空をあおいで」(2010)。ロングインタビュー書籍「いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった」(2014) がある。


PhotoⒸこだま和文
園田ゆみ/プロフィール
青山「青い部屋」を皮切りに、東京のコア・ライブシーンの多くの箱のスタッフを歴任し、河内一作プロデュース「音楽実験室 新世界」でも、カウンターチーフ、ブッキングマネージャーを務める。現在もライブシーンに身を置き、昨今は、主にライティング業務に携わる。また、「ゆみたん」名義でのDJ、「迷い道くね子」名義でのアーティスト活動など、神出鬼没な夜の街の妖精度は更に深まるばかりである。


河内一作/
山口県生まれ
八十年代から霞町クーリーズクリーク、青山カイなど常に時代を象徴するバー、レストランの立ち上げに参加。九十年代、仕事を辞め世捨て人となる。
六年間の放浪生活の後社会復帰し、アダン、青山タヒチ、白金クーリーズクリーク、音楽実験室新世界、奥渋バー希望、南洋ギャラリー、など手がける。お楽しみはまだこれからだ。