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「連載対談/『酔談』Second Season vol.2」ゲスト:大西ユカリ氏 飛び入りゲスト:新宮虎児氏(クレイジーケンバンド、SKA-9) ホスト:河内一作 

「連載対談/『酔談』Second Season vol.2」ゲスト:大西ユカリ氏 飛び入りゲスト:新宮虎児氏(クレイジーケンバンド、SKA-9) ホスト:河内一作 

 “酔談”。見ての通り、酔って語らうこと。当然、造語である
 酔っているがゆえの無軌道さ、無責任さ、大胆さ、自由さをそのまま気取らず飾らず実況する、それが「対談連載/酔談」の全てである。
 
 アダングループ代表、河内一作が東京の夜のフロントラインに初めて立った、1981年の「クーリーズクリーク」から現在に至るまで、彼が関わった店が、単なる飲食店におさまらず“自由なステージ”としての酒場の背景を演出出来えた“要”ともいえる大切な友人達を毎回招き、テーマなしのゼロベースから美味しい酒と肴の力を借りつつ今の想いを語り尽くすトークラリー。
 セカンドシーズン2回目となる今回のゲストは、一作がプロデュースした「音楽実験室 新世界」(2010~2016年)の永遠のヘッドライナーであり、昭和歌謡とブラックミュージックを独自の大阪ローカルカルチャーとして融合させ全国区にまで持ち上げたあのディーバ、大西ユカリ氏(以下敬称略)。
 東京でのライブ公演を翌日に控えた多忙の中での今回の対談とあり、一珍しく一作も下調べとしてオフィシャルサイトとウィキペディアには目を通してきたとのこと。  
 そんな情報収集の中衝撃の事実が!?!?
 “大西ユカリ、クレイジーケンバンドの新宮虎児と結婚!!”
 「これは事実なのか?」。
 胸中、半信半疑の中、久々の再会となる酔談は始まるが、単刀直入にそこを触れる訳にもいかず、真相を探る敏腕刑事の初動捜査になぞらえた、ごくごく当たり前な近況報告からまずはスタートした。
◇◆◇◆◇

河内一作(以下一作):久しぶりだね?

大西ユカリ(以下大西):ええ、一作さんもお変わりなく。

一作:まだ、新世界(大阪府大阪市浪速区恵美須東)にいるの?

大西:新世界から実は引っ越したんです。

一作:えぇ!?引っ越したの!?

大西:5年前かな。

一作:あそこは随分長いこといたでしょ?

大西:長かった(笑)10年くらいいました。

一作:で、どこに行ったの?

大西:桜川っていうところ。

一作:ああ、桜川ね。
(唐突に)桜川唯丸師匠。ハハハハハ(自虐的笑)

大西:桜川唯丸師匠??(笑)
ほんまや。ハハハハハ(爆笑)

一作:で、今日はどこへ泊るの。
※大西ユカリは翌日の高円寺「JIROKICHI」ライブのため上京中。

大西:今日は高円寺。ライブハウスの横にホテルがあるんです。だから駅前なんです。
中央線界隈って下手に移動すると夜大変なんで、楽屋代わりにもなるし。
ここのところ、高円寺の時は高円寺に泊って。
一作さんに、西麻布の新世界に呼んで頂いていた頃は、六本木とか品川に泊っていましたね。
品川、めちゃようなりましたね。エレベーターやらエスカレーターやらやたら増えて。

一作:そうだね。ここ(泉岳寺)も新しいJRの駅が出来るんだよ。正にこの前に。
品川、田町、の間ね。

大西:へぇ~、そうなんですね。


大西ユカリ氏

大西:久しぶりにお会いしますが、一作さんは全然変わらんね。

一作:いやいや(苦笑)
まあ、新世界の荷が下りたってのがでかいんじゃないかな?(笑)

大西:ハハハハハ(爆笑)ほんまですか!?(笑)
あれやめて2年?3年?もっと??

一作:3年でしょ。

大西:もう3年になりますか。

一作:ほっとした感じ(笑)
ちょっとやっぱりね、……、経営的にキツかったんですよ(苦笑)

大西:うん。

一作:6年くらいやっていたんだけど、毎月毎月金の心配しなくちゃいけなかったから(苦笑)もう、あれが限界だったな。

ラジオアダン:新世界を始めるにあたって、一作さんの中に、「純関西のアーティストを定期的にフルバンドで呼びたい」って希望があったと思うのですけど。その筆頭が大西ユカリさんで、

大西:あと、(ゴトウ)ゆうぞうさんと。

一作:うん、確かにそれはあったね。

大西:自分も途中へこたれてしまってね、もっと意地張ってやんのもありやったちゃうかな?とも思うんだけど、どうしても、……、面白かったんですけどね。いろんなミュージシャン呼んでね。

一作:凄く面白かったね。
ずっとやりたかったんだけどね(苦笑)。

ラジオアダン:大西さんと西麻布新世界で素晴らしいコラボをしていたガールズ・ファンクバンドのズグナシも残念ながら先日解散しましたね。

大西:そうですね……、でもみんな3人共、それぞれにがんばってはるから、

ラジオアダン:ズグナシのみなさんは実力がありますから。

大西:ええ、その通りです。
そう思えばみなさんやってはりますね。たをやめ(オルケスタ)とか、手つどうてもらっていた子らはみんな。キャリアが10年20年ってなって。

一作:そうか、大阪の新世界にいってもあの辺にユカリちゃんはもうおらんのね……。

大西:そうですね。
もう、劇場もなくなったし。

一作:通天閣はあるけど劇場は閉鎖された状態?

大西:ええ。今はお土産屋ストリート。江崎グリコ。ハハハハハ(笑)
もうえらいことになっている。

一作:江崎グリコがプロデュースで仕切っているってこと?

大西:そう。もうばぁ~っとお土産物が。大阪なんとかみたいな、グリコのおっちゃんが大阪土産みたいな感じで(笑)

一作:そうか、……、企業がスポンサーについて、あそこは貴重な箱だったんだけどね……。

大西:まぁ~確かにね、……、よかったですけどね。……、でも、やっぱりなりたたへんかったんじゃないですか?……、もっとライブハウス的なことをやらはったらよかった思うねん、立地もええし。
やっぱり、昔の建物やからなにが悲しいって、非常口がないから入場制限せなあかんのですよね。
下に向くほど広いやない、ああいう塔っていうのは、耐震上ね。
ほな、下広いんです、基本。でも、入り口ふたつくらい(苦笑)
非常口の消防法で、「何人までしか入れてはあかん」とか出てくるんですね。
そうすると、「劇場型にする」とかなんかする言っても、そこに穴掘る訳にはいかへんから、やっぱり人を少なくしてやるしかない。

一作:ユカリちゃんの場合、あそこでやるときは主催として箱貸しでやっていた訳?

大西:あそこはややこしかったんです。
通天閣観光株式会社いうのと、松竹芸能と吉本興業。その三つが。
照明は松竹で、なんか段取り部隊は吉本みたいね。で、建物自体は通天閣観光っていう、ものすご複雑でした。
それが、前にいてはった阿部(登)ちゃんとか生きてた時分は、まだ通天閣の会社の専務とか生きてはったんです、初代のおっちゃんらが。
「大西さんやるんやったらその日の電気代くれたらええで」っていうてくれてはったの、当時は(笑)

一作:そうなんだ(笑)

大西:当時はね(笑)
でも、その皆さんが亡くなり、阿部ちゃんもいいへんくなり、経営も変わり時代も変わり、

ラジオアダン:阿部さんは、日本語レゲエの名曲『何も考えない』の作詞をされた方ですよね?

大西:そうです。
ああいう、インバウンド(訪日外国人観光客)が始まる時代とともにですね、そのなんか、みな撤退というか、なんか凄かったです。
蓋開けたらもの凄い金額わたし払とったりしました。

一作:途中から箱貸しみたいになったんだね。

大西:そうです。
それがよう分からなかったんですよね、なんでなのか。ハハハハハ(爆笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
ごめんごめん、笑っちゃだめだよね。大変だよな、それ。

大西:ねぇ~(笑)
それでも、「やらなあかん」と思ってやっていたんですけど。でも、運良く契約期間がきて、「もう出てください」みたいな。「あと3ヶ月で出らなあきませんよ」って言われた時が丁度。
契約書交わしとったんですよね。で、きっちりと。法的にはこちらからも向うからも言い合いすることは一切ないような。


河内一作

◇◆◇◆◇
 当たり障りのない近況報告を延々やりとりしていても到底真相へは至らないと察知した一作、一旦ここはそんな邪心は横へ置き、自身お気に入りの大西ユカリ最新アルバム『BLACK BOX』の制作裏話へと急速に舵を切る。
◇◆◇◆◇

一作:去年のアルバム、おれ凄く好きなんだけど、あそこに行き着いた流れはどんな感じだったの?

大西:あれはね、……、わたし一回、阿部ちゃんが死んで、解体と云うか事務所のうなって一人でやってたじゃないですか。
ほいで、だんだんやっぱりいろいろがんばってるとお金絡みの話とか一杯くるんですよ。「いややなぁ~…」思てねお金の話。で、もういっぺん中西っていう当時一緒に組んでた、今、木村充揮さんの事務所なんですけど、『ダンディライオン』というですね。阿部ちゃんの一派のとこに、「もういっぺん話しなあかんなぁ~」思とったんですよ。ほんなら、今の社長も、「ユカリちゃん、いろいろあったけど、もういっぺん組んでアルバム作らんか?」言ってくれて、ほな、面白そうやしいうので。
「ユカリちゃんをやるなら」いうことでテイチクレコードが手を上げてくれたんです。で、テイチクで1枚(『EXPLOSION』)オリジナルを作った後、「さあ、次どうしよか?」ってなった時にうちの社長が、「せっかくブラックミュージックとかやってきたのに1枚もそういうカバー的なものやってない。歌謡曲とか昭和歌謡云われてるけどそのルーツにはソウルとかゴスペルとかがある訳やから、そんなのいっぺん作ったらどうや」みたいな話になって。

一作:へぇ~。

大西:よう考えたら、「20代の頃とか歌うてたけど形にしてないなぁ〜」なんて曲がわんさか出てきて、もう、「どないしよう??……」みたいな感じやね(笑)

一作:かっこいいよね。最初の入り方がいい、1曲目(『ユー・ノウ・アイム・ノー・グッド/エイミー・ワインハウス』)。

大西:ハハハハハ(爆笑)1曲目!?(笑)
あれもね。ほんとはもっともっとブラックにこだわりたかったんですけど、1曲目、2曲目がなぜか若手の人らの曲で。
で、「みんなが知ってる曲も入れとき」ってことで、ほんまはね、「どうかな?」思ったんです、「もうええかな?『テネシーワルツ』とか『キリング・ミー・ソフトリー・ウィズ・ヒズ・ソング』」とかね。ああいうのはもう一瞬、「ええかな」思ったんですけど、やっぱ入れといたら入れといたで、うち母親とかがね知ってる曲やから、江利チエミが唄ってたんで。「知ってるし」いうんでなんか結果的にはよかったですね。

一作:その辺入れて全然いいんじゃない。

大西:面白かったです。
ゴスペルありぃ~の、その、ソウルありぃ~の、今時のねR&B、なかなか。でも、必死でしたけど(笑)

一作:抑えて歌ってたでしょ?

大西:抑えるっていうか、あんまり録音期間がなかったですよ、実は。歌入れあれ2日くらいしかなかった。一日3~4曲録ってましたから。もう、あんまり時間もなくタイトで。で、予算もどんどんね、ああいうバジェットの世界的にね、バジェットがもう何十万枚売れるような人か千枚必死で売る人か、今もうどっちかなんですよ、音楽界。
自分なんかどっちか云うたらインディーズ寄りの。やっぱり年々厳しくなりますね。
でも抑えた割には、「ようあんなん出来たな」ゆうくらい、あの、リズム隊変わらんかったんで、根幹が揺るがなかったですね。
だから、内容的にはよかったちゃうかな

一作:いや、凄くいいよ。

大西:ゲストミュージシャンもなかなかの面子で凄かったですね。今、もう無理ですよね、甲本ヒロトさんとか、山崎まさよしさんとか、あと、大阪モノレールの中田亮さん。いろんな方に客演してもらって、……、もう、ようせんわ、あんなの。ハハハハハ(爆笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
ヒロトさんとの曲(『星空のふたり/マリリン・マックー&ビリー・デイビス・ジュニア』)、素晴らしいよね。 

大西:うん。もう世界を、ガッ!ともっていかはるんで。彼とデュエットした曲を7インチきったんですけど、即完でしたね。びっくりしますね、流石ヒロトさん、ビニールジャンキーなんで(笑)ファンもビニールジャンキーが多いんですね。

ラジオアダン:以前インタビューさせていただいた時にお訊きしたんですが、メジャーな存在になる前は真島昌利さんとお二人でレコード屋のはしごとかしょっちゅうされていたとか。

大西:今でもそう(笑)
ライブとか見にアメリカとか行かはるでしょ。トランクはひとつはからっぽで行かはるんです。で、全部レコード積めて帰ってくる(笑)

ラジオアダン:ご自分の楽曲表現はシンプルですが実は音楽に関して非常に博識な方なんですよね。

大西:めちゃくちゃ詳しいです。
あと、今回のアルバムでプロデュースで入ってくれた三宅伸治さんも。三宅さんとヒロトさんは仲いいんですけど、三宅さんも凄いですよね、やっぱ(忌野)清志郎チルドレンですからね。レコードが好きじゃなくて音楽が好きなんですね。
で、「どうせ聴くんやったら、この曲ステレオもあるけどモノラルでも聴きたい」って、そういう人たちなんで。ジャンル問わずですね。伸ちゃんに関しては清志郎さんといたからR&Bとかソウルはむちゃくちゃ詳しいです、ほんまに。何訊いても知ってます。だからレコーディングの時も心強かったです。

一作:本当に凄くいい作品だよ。

大西:いい思い出になったかなぁ~と。
ガチガチにソウルな人たちに言わすと、「ユカリちゃん、もういいやんか」って、
「ヒット曲はもうええがな」と。「もっときついとこいかんかい!」みたいなね(笑)

ラジオアダン:俗に云うレアグルーブやフリーソウル系をカバーしろということですかね?

大西:そうですね。レア盤とか、もっとスウィートソウルとか。「もっとシャウトしろ!」とか。

一作:そうかな?あんまりこってりしてなくてさっくりしていておれはいいと思うけどな。

大西:あんまりついていかれんかったらいかんなぁ~と思て、基準をうちの家族とか友達とかがとりあえずついていけるレベル。
曲とか誰がどんな感じでやっていたバージョンとかね、そんなんもぉ~マニアはおもろいですけど普通の人はあんまりおもろい話ちゃうからね(笑)

一作:あと、土地柄もあるじゃない。

大西:そうですね。
実は1曲目、夫に偽名で弾いてもらっているんです。

◇◆◇◆◇
 敏腕刑事、河内一作の初動捜査が功を奏した!
 なんとこちらが更なる探りを入れる前に、大西自らが早々に自白してくれたのだ。
 さあ、ここからフェーズは一気に変わり急速に核心へ近づく。
◇◆◇◆◇

一作:この対談の前に、実は珍しくウキペディアやホームページでユカリちゃんのことを予習してきたんだけど(笑)
略歴に書いてあった結婚ってやっぱり本当だったんだね!
で、いくつの人?

大西:虎ちゃん(新宮虎児氏:以下敬称略)、今日来れるようなら案内して上げてもいいですか?

一作:あっ、そうなの!?!?勿論!!
「早くきいや」って(笑)

大西:ねぇ(笑)
虎ちゃんはいっこ上です。56。わたしが今年55になりました。

ラジオアダン:新宮さんはクレイジーケンバンドのツインギターのお一人ですよね?

大西:ええ。

ラジオアダン:新世界にもご出演していただいたもうひとりのギター小野瀬雅生さんは因においくつなんですか?

大西:小野瀬さんは57歳くらいかな?

ラジオアダン:で、横山剣さんはおいくつなんでしたっけ?

大西:横山さんは58か9。
1960年生まれ。

一作:それじゃ~、おれが親しい、横浜不良ロック系の人間とも繋がっているだろうね。
TENSAW(テンソウ)ってバンドでベースをやっていたミチアキ(鈴木享明)はいくつになったんだろう?
※本年で63歳
ユカリちゃんはTENSAWって知らないかな?結構いいバンドだったんだけど。

大西:TENSAW?

一作:うん。横浜ベースで活動していて。
ミチアキは今は日ノ出町で「センセーション」(The CLUB SENSATION)って
ライブハウスをやってる。

大西:あぁ~そうですか。多分、虎ちゃんは知ってるんじゃないかな?

一作:知ってるでしょ。横浜狭いから(笑)
清志郎さんのサポートもやっていた。
ところで、虎ちゃんは横浜の人なの?

大西:生まれは、“アマ”(尼崎)なんです、アマと云うか西宮なんです。

一作:アマなの?(笑)

大西:実はちっこい時は。3歳くらいまで。

一作:アマ、おれ憧れるんだけど(笑)

大西:アマいったら怒られるのかな?(笑)ニシキタ??
正しくは西宮北口ですから。
虎ちゃんは西の生まれで、ご親戚とかも西にあっちこっちいらっしゃるんだけど、3歳か4歳で横浜、川崎の方に来たみたいですね。
※実際は品川。

一作:じゃ~ほとんど本牧の人でいいんだね?

大西:ええ、本牧のCHIBOW(チーボー)さんとか親しいですね。「ブギー・カフェ」のね。CHIBOW(チーボー)さんとは一緒にバンドもやってます。

一作:ああ、そう。じゃ~ミチアキは確実に知ってるね。

大西:ええ、よう知っていそうですね。

一作:いいね、なんか嬉しそうで(笑)

大西:ええ、嬉しいですよ(笑)
もう、一人で暮らしていくと思っていたんで。ちょいちょい彼氏が来るくらいで。

一作:いいね、ミュージシャンでギタリストなら究極的にはふたりでも出来るし。

大西:せっかくお互いミュージシャンだし。実は今ふたりで曲作りをしているんですけどね(笑)

一作:毎回毎回、バンドを引き連れてツアーをきるのも大変だもんね。

大西:そうですねぇ~、……、そやからこの頃は東京に住んでいるピアニストと2人でやったり。明日もそのセットで。
歌丸裸なんかわたし絶対せぇ~へんと思っていたんですけど、今年から虎ちゃんとふたりでもやろうと思って。

ラジオアダン:ピアニストはどなたですか?

大西:ピアノはSWING-O(スウィンゴ)っていう、関西出身の、

ラジオアダン:ああ、分かりました。わたしの知人のミュージシャンともよく御一緒されている方ですね。

大西:彼、結構、いろんなところに出てますね。最近はマーヴィン・ゲイのアルバム(『You’re The Man』)で林剛さんと対談したりしてます。
ユニバーサルから出たやつ、一応、新譜ということになってますが、寝かせていたやつの寄せ集め。

ラジオアダン:SWING-Oさんも関西の方ではなかったですか?

大西:あの子は確か豊中の方の出身で、今は目黒かなんかに住んでいるようですけど、めちゃ関西弁です(笑)

一作:関西の人って昔からルーツミュージック界隈で上手な人が多いけどなんでだろうね?

大西:ねぇ~(笑)土のせいですかねぇ~(笑)
土と水ですかねぇ~、ハハハハハ(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)

大西:アスファルトが少し違うちゃいますか(笑)

ラジオアダン:ブラックミュージック系のピアノもソー・バッド・レヴュー
の国府(照幸)さんは関東勢よる遥か昔にマスターされていましたよね。

大西:ソー・バッド・レヴューね。

一作:東京の人はセンスだけでいけちゃう人が結構いるけど関西はそういう訳にはいかない。

大西:そうですね。
関西好きな人もなんかある種黒いですね(笑)
こっち来てもそういう匂いする人いますよね。Charさんとかロックなんだけど、凄くブルースな感じを受けますし、清志郎さんも関西大好きですものね。やっぱりベースがR&Bですね、清志郎さんは。

ラジオアダン:Charさんが石田長生さんとBAHOをやられていたときに、横山ホットブラザーズ師匠と競演していますが、子供みたいに喜んでいました(笑)

一作:CAYを立ち上げた頃、BAHOよく出演してました。

大西:ああ、いいねぇ~(笑)
わたしもBAHOに乗ったことあります、欧陽菲菲の役で(笑)

ラジオアダン:最高のキャスティングですね(笑)

大西:今度、石やんのトリビュートアルバムが出るんですよ。自分も参加してるんですけど。みんなでよってこって石田長生さんの曲をやるという。一応、追悼でね。みんな天国へ逝ってしまいますから……。

一作:ねぇ……、みんな逝くね……。

◇◆◇◆◇
 何かお互い少しそわそわしつつも音楽話でお茶を濁すふたり。
 そうこうしているうちに、この夜最大のサプライズタイムへいよいよ突入!
 待望の飛び入りゲスト新宮虎児の登場とともにホストの進行具合いにも大きな変
化が?
 メタモルフォーゼした河内一作の第二形態は桂文枝??
◇◆◇◆◇

一作:(虎児に向かって)今日、これがあるんで大西ユカリで検索したら、「結婚してはるぅ~」って(笑)

新宮虎児(以下虎児)ハハハハハ(笑)よろしくお願いします。

一作:その辺の話はプライベートだからあんまりしないほうがいいかと思ったんだけど、この対談連載は会食してリラックスしながらの会話がいいから、よかったらその辺の話も出来たら嬉しいんだけど。

虎児:そうですか(苦笑)

一作:なんか飲まれますか?
いつもは何を飲んでるの?

大西:いつもはハイボール。

一作:じゃあハイボールでいいですか?

虎児:はい。

一作:はい、ボール(笑)

大西:じゃ~、わたしも、はい、ボール。ツーボールです(笑)

一作:ハハハハハ(笑)

大西:(虎児に向かって)なんか一作さん、興味津々でさぁ~(笑)

虎児:自分たちから発信しなかったんで。
隠している訳じゃないんですけどね。

一作:ユカリちゃんには、ちゃんとした音楽の人が必要ですよ。凄くいいことだと思う。横浜だし。
やはり本牧ですか?

虎児:本牧ですね。住所で云うと小港(町)というところなんですけど。
本牧1丁目、2丁目がなぜか小港になって、本牧宮原って、

一作:あの石川町のトンネル抜けて、ずっと行って、

大西:さっき、近くのCHIBOWさんの店の話もしてて、

一作:じゃ~中華屋の「奇珍」とか、

虎児:ええ、行ったことはあります(笑)

一作:あそこは地元の人たちが結構行くでしょ?

虎児:そうですね、好きな人は好きですね。

一作:町中華のいい店ね(笑)
おれ、あれが大好きなの。……、……、横浜の、……、あんかけのぉ~、……、

虎児:サンマーメン(笑)

一作:そう、サンマーメン大好きで。奇珍でよく食べたよ。
歌手でクムフラのサンディーって人がいて、

虎児:サンディーさん?有名な方ですよね。

一作:そのサンディーが横浜タワーでライブをやったことがあって。
フラやハワイのイベントで、亡くなった尾崎紀世彦さんやいろんな人たちも出ていて、

虎児:尾崎さんならぼくも会ったことがあります。

一作:そうですか。
尾崎さんはやっぱり素晴らしいね。ハワイアンをやっても素晴らしかった。
で、イベントが終わりました。サンディーに「飯でも食いに行こうか?」ってことで、奇珍を知っていたから連れて行ったら、尾崎さんとアグネス木村って人が来ていて驚いた(笑)

大西:中華料理屋でばったり(笑)

一作:うん。
ライブ会場から結構遠いんだけど尾崎さんは敢えて来るんだよ。なんかよくない!?(笑)
横浜をよく知らない人たちは、普通、中華街に行くよね。

虎児:そうです。中華街はぼくらは行かないです。

一作:あの辺りの風情をおれは好きなんだけど、昔の本牧はどんな感じだったんですか?

虎児:ぼくの場合、一番いいって云われる時の実体験が残念ながらないんです。

(ここで、3人にハイボールが運ばれて来る)

一作:では、皆さん揃ったところで、ご結婚おめでとうございまぁ~〜す!!
(一同乾杯)

ラジオアダン:厳密にはいつ入籍されたんですか?
(虎児に向かって)本日の進行、わたしが担当させて頂いております。

大西:去年の2月。

一作:彼はおれがプロデュースしていた西麻布のライブハウス新世界でブッキングの方でも頑張ってもらっていたんだ。

虎児:新世界はレゲエの方たちも沢山出ていましたよね?

ラジオアダン:ええ。

一作:てちゃん(西内徹)とかさ、

大西:てちゃんとは一緒にSKA-9をやっています。

一作:えっ、そうなの!?

大西:この人、SKA-9です。

ラジオアダン:じゃ~当然、森(俊也)さんも、

虎児:ええ(笑)

一作:あっそうか、それでユカリちゃんのホームページを見た時にSAK-9と繋がっていたんだ。

大西:ええ。横浜で自分がゲストと云うか飛び入りでステージに上げてもらったりして、

一作:「どうやって繋がったのかな?」って思っていたんだけど旦那の繋がりだったんだね。

虎児:本当の最初というと彼女がデビューした20年以上前が最初で、

大西:同じイベントでよくクレイジーケンバンドと並んでいましたから。

ラジオアダン:ぼくの勝手な認識なんですが、関東で大西ユカリさんを知った切っ掛けで高田文夫さんのお名前を上げる方が非常に多いと思うのですが。

大西:「(高田文夫のラジオ)ビバリー昼ズ」でしたね。
それこそ、「大西ユカリィ~!」、「クレイジーケンバンドォ~!」、「横山剣さぁ~ん!」みたいな感じで高田先生は話ししてくれはってて。


新宮虎児氏

一作:さっき、この辺懐かしいって虎ちゃんが言っていたけど、品川に住んでいた時期があったの?

虎児:ぼくはずぅ~と流れ者で。

一作:最初はアマでしょ?
さっきちょっとユカリちゃんから聞いた(笑)

虎児:本籍は兵庫県の武庫之荘(むこのそう)。

一作:なに?

大西:武庫之荘は尼崎。

一作:尼崎?

虎児:3歳くらいまで西宮の北口ってところにいたんです。

一作:それから横浜ですか?

虎児:いや、品川です。

一作:品川のどこ?

虎児:品川、旗の台。

一作:旗の台だぁ~(笑)

大西:ハハハハハ(なぜか爆笑)

アダンラジオ:一作さんも旗の台付近に住んでいた時期がありませんでしたっけ?

一作:あったよ。不遇時代(笑)
お金がなくて起きたら、新丸子の「三ちゃん食堂」で安酒あおっていた(笑)

虎児:で、小学校の時に家族は大田区に引っ越したんですけど、「転校したくない」って言ったら、学校から許可がもらえて電車で通っていたんです。
大田区は蒲田の近所。

一作:蒲田はいいよね(笑)

虎児:ぼくも大好きです(笑)
その後、高校も蒲田の近くに行って。

一作:虎ちゃんの頃の蒲田の高校とか悪い奴が一杯いたでしょ?(笑)

大西:彼のおにいちゃんがむちゃくちゃ悪かったみたいですよ(笑)

ラジオアダン:その辺の地域ですと、なんといってもラッツ&スターが有名ですよね?

虎児:ええ、大森八中がラッツ&スターで、ぼくが通っていたのが七中です。

一作、大西:ハハハハハ(笑)

一作:そんな青春時代、一体どの時期から音楽にはまりだしたの?

虎児:ぼくはもう単純で、キャロルです。
今、56歳なんで、キャロルが解散した時が中学に入った頃。
ダウンタウン・ブギウギ・バンドは聴いていたんですけど、仲のいい友達が、「キャロルの方がかっこいい!」って。
それで、「聴こう」と思っていたら兄がレコードを持っていたんです。

一作:へぇ~。
初期のキャロルはかっこよかったね。

虎児:それで、ビートルズを知らなくてキャロルが好きという(笑)

一作:それがいくつぐらいの頃?

虎児:中一。

一作:中一だ(笑)
中一でキャロルはいろんな意味でやばいよね(笑)

大西:やばいですね(笑)

一作:おれはキャロルは東京に出て来てからだから。

大西:そうですか。
自分なんか、中一の時は、野口五郎からシャネルズへの過渡期でしたから。
ハハハハハ(爆笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
シャネルズが中一!?そう!(笑)

大西:歳はいっこしか違わへんのですけど、学年はふたつくらい違うくて、おにいちゃんがおる。わたしは妹がおるやから、なんか全然ちゃうんですよ。文化とか。

一作:まあ~あと、東京と大阪の違いもあるからね。

大西:それもあります。聞いてたら、「どこの世界の話やろ」みたいなことばっかりですもんね。
なんか、こわいこわいお兄さんがいてはる話とか。
自分なんか金八先生が関の山でしたから(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
それ、ユカリちゃんと虎ちゃんと逆じゃないの!?(笑)

大西:中一の時中三とかやから、ほなちょっと大人な訳です。学年とかでいくと。

一作:この人(進行役)が今、池上に住んでいるから、たまにそっち方面で飲むんだけど、最後は蒲田でぐでんぐでんになる(笑)

虎児:ぼくの頃は未成年がお酒を飲んでもあまり問題にならない時代だったんで蒲田でよく飲みました。

一作:ぶっちゃけ悪かった?

虎児:いや、ぼくはそうでもない(苦笑)

ラジオアダン:でしたら、鈴木姉弟(鈴木聖美、雅之)は早い時期からお知り合いだったんですか?

虎児:その頃は面識はないです。
まだシャネルズがデビューする前でしたから。
デビュー後は、ファンの間で、東京のシャネルズと横浜のダックテールズの二つのバンドがその種の音楽の双璧と見られていた時期がありました。横山剣さんが入る前のダックテールズですね。
年齢は高校生くらいなんだけどこの2バンドで日比谷(野音)を満杯にするくらいの人気でした。

一作:へぇ~。

ラジオアダン:今、虎児さんは、ギタリストとキーボディストとしてご活躍中ですが、当時はコーラスグループをやりたかったのですか?

虎児:当時、ぼくが入っていたバンドのメンバーに新宿「ルイード」の店員がふたりいました。ルイードにはシャネルズもよく出演していて、普通はぼくらのバンドの格では出れないんだけど、そういうコネクション的なことから出演させてもらったら、なんとなくアマチュアながら人気が出ていって。その後、スカウトされて。

大西:実はアイドルデビューしてるんです。

虎児:ハハハハハ(笑)

大西:髪、マッシュルームとかやって。
なんかもうびっくりですわ。

一作:ガハハハハ(笑)
音楽的にはいつぐらいの話?

大西:超80年代。チェッカーズとかの後ぐらいとちゃう?
シャネルズが83~4年にラッツ&スターに改名して、シャネルズの弟分みたいな、M-BANDとかムーンドックスとかが出てきた頃なんですけど、彼のバンドはロマンティックスっていうアイドルグループだったんです。

虎児:レコードデビューが84年ですかね。194位かなんか(苦笑)

大西:今は考えられない(笑)

一作:その時は歌ってたの?ギターだけ?

虎児:ギター。

大西:チャッカーズが出てきて大人数のグループがなんか流行っとった。

虎児:今更恥ずかしいですが、デビュー前のぼくの髪型はリーゼント。

大西:デビュー前はね。デビューする時なんかリーゼント下ろさなあかんと。

一作:ということは、やっぱキャロルで、デビュー前は音楽的にもそっちだったんだ?

虎児:キャロルから入って、今度は、『アメリカン・グラフティー』を聴くようになって、

一作:うんうん。

虎児:で、最初は皆が聴くようなヒット曲が好きだったんだけど、こうだんだんそのアルバムの中でも好きな曲が変わっていき、気がついたらスタックスやモータウンなどの黒人音楽を聴くようになっていたんです。

一作:なるほど。
でもそこから、今のクレイジーケンバンドやSAK-9の音楽性に辿り着くまで結構長かったんじゃないの?

虎児:もともと、ぼくはロックとかハードロックを知らないんですね。
まあ、(レッド・)ツェッペリンとかああいうのは勝手に耳に入ってきてましたけど。

一作:その辺はおれも同じだな。

虎児:結構、パンクが好きなんです。

一作:パンク、おれも好き(笑)

虎児:レベルミュージックが好きで、やっていくと、まあ、CHIBOWさんにくっついて行った結果なんですけど(笑)
まず、ガレージロック。パンクからガレージロックになって、

一作:うん。

虎児:CHIBOWさんがやっていてぼくも在籍していたMOJOS(モジョス)というバンドはガレージロックみたいなイメージだったんですけど、レベルミュージックをやっていると、やっぱロンドンにいき着くんです。低層階級とジャマイカの移民がいて必然的にレゲエへ、

一作:やっぱそっちにいく訳だ。

虎児:ええ。
例えばクラッシュのベーシスト(ポール・シムノン)はレゲエのマニアですから。

一作:やっぱりその辺はロンドンなんだよなぁ~。

虎児:だから、レゲエといってもジャマイカよりはロンドンのレゲエの方がしっくりくる。
イギリスにはスキンヘッズという言葉があって、髪型的な意味ではなく思想的なものなんですが、ぼくはSAK-9でやっている音楽はスキンヘッズ・レゲエと呼んでいます。

一作:その辺に辿り着いたのはいつ頃なの?

虎児:スキンヘッズ・レゲエをやり始めたのは5年くらい前ですかね。

一作:80年代はどんな感じで活動してたの?

虎児:ぼく、デビューしたバンドが嫌で1年でやめてしまったんです。
まず、レコード会社というものがあって、プロデューサー、ディレクターの言うことを聞かないといけない訳です。実は、ぼくの場合、プロデューサー(吉田建)は大好きだったんですけどね(笑)
事務所の方の方針はアイドル路線、

一作:だってアイドルだったんでしょ(笑)

大西:ハハハハハ(爆笑)

一作:(大西に向かって)嬉しそうに笑うね(笑)

大西:そうやって紐解くと、音楽遍歴がありつつの、キャロルからクールスにいき着いて、ジェームス(藤木)さんのところにいくと、ジェームスさんと横山剣さんが密接で、この人はなぜかジェームスさんのバンド、横山さんのバンド、両方の手伝いを始める訳ですよ。
そんで、ジェームスさんのところいきながらクレイジーケンバンド、ジャームスさんの手伝い、クレイジーケンバンド、で、今はずっとクレイジーケンバンドなんですが。
そこにいき着くまではいろんな音楽遍歴があったんでしょうねぇ~。

一作:「あったんでしょうねぇ~」って(笑)あんまりその辺ふたりで話さないの?(笑)

大西:なんか昔の話は昔の話やから、なんかわたし割と形からなんで、この人がフレッドペリー着てて。それがなんで好きかというと、わたしが大好きなエイミー・ワインハウスがモッズの彼氏がいて、その彼氏が、(虎児を見ながら)もうこういう感じで、ずっ~とフレッドペリーを着てて。追いかけていくとエイミーがやっぱりフレッドペリーの中にブランド持つくらい凄い着てたんですよ。その形からが自分凄い凄い好きで、……、なんちゅ~のかな?……、その服のために体絞るとかさ、そういう世界凄い大好きやからさ、今、それで着てるんですけど。
音楽性も勿論、今やってるスキンヘッズ・レゲエの世界もモッズのファッションの中にもフレッドペリーがあるから。今着てたら自分の周りでは、「自分テニスやってんの?」なんて言われるんですけど。ハハハハハ(爆笑)

一作、虎児:ガハハハハ(爆笑)

大西:「いや、それ違うて」。ハハハハハ(爆笑)
テニスで着てるなら第二ボタン開けるやん。だからそのぉ~、音楽と服とが、……、音鳴ってる服ってぇ~のが自分はスカジャン以来久しぶりなんですよ。
なぁ~んとなく虎ちゃんと仲よくするようになってからそういうとこも聴くようになって、スカとかも全然分からへんけど、「なんかおもろいなぁ~」思て。
それに対して深追いするのは彼の過去であって彼の志向であって、自分の志向の中にもモータウンがあったり。
この間、『ノーザン・ソウル』の映画が出てきて、あれやってたけど、あの概要を知ってもなんか、「スタックスがおもろいな、スタックスの方がいいな」って思ってまうのね。だからなんか、そこらの音楽の話も出来るから一緒になったと思うんですけど。
今訊いてて、人それぞれあるなぁ~、へぇ~と。ハハハハハ(爆笑)

一作:ハハハハハ(笑)へぇ~と思ってた!?ガハハハハ(爆笑)

◇◆◇◆◇
 “長距離結婚”という独自の生活スタイルを構築するふたりの、恋愛中のディープな恋バナを訊き出そうと詳細に目配せする一作だが、照れなのか?真面目な性格?がそうさせるのか?話は増々音楽話へゆり戻されていく。
 そんな混迷のこのパートの鍵となるタームは“トラユカ”??
◇◆◇◆◇

大西:今、実は一緒に曲作りをしていて、詞のやりとりとか曲のやりとりとかキーのやりとりとかをこと細かにやっているんです。
普段は毎日欠かさずテレビ電話ですよ。長距離ですから。長距離結婚ですから(笑)

一作:長距離で毎日欠かさず!?(笑)

大西:はい。

一作:それは凄い。
結局、新宮虎児のギターに惚れているの?

大西:ギターもそうですけど、人的に凄い真面目なんですね。わたしどっちかって云ったら不真面目じゃないですか.。ハハハハハ(爆笑)

一作:もう、風貌、性格がギタリスト然としてるよね

大西:うん。
でも、実はベースが好きなんです。曲も打ち込んでいろいろ作ったりするから。
自分は将来的には、「ベースとトラックと歌とでやってみたい」と思っているので。
割とね、歌い手ってバスドラやったりベースやったりが先もらいたいのはあるんで。

一作:いいなぁ~それ。

大西:ギターってもう、結局、歌の場合アルペジオとかさ。
この人ベース好きやから気持ちを分かってくれる。

虎児:今ベースの話になりましたが、人前でプレイすることはないんですけど、最近ベースを買って、今日、家に届いているんです(笑)
なんで、実は、「早く帰りたいなぁ~」なんて(笑)

ラジオアダン:どのモデルを購入されたんですか?

虎児:75年の(フェンダー)ジャズベ(ース)です。

ラジオアダン:おお!いいですね!

虎児:ぼくがユカリとやりたいのは、……、ぼく実は機械が好きなんですよ。打ち込みとか、

一作:いいじゃない、基本がニューウェーブで。

虎児:なのでデモテープも全部打ち込みで作っていて。
自分は演奏が下手なもので(苦笑)機械がやってくれると凄く上手いんで(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
だからニューウェーブがもろにそうだったじゃん。
それいいね。

虎児:DJのソフトも今は当たり前で、須永辰緒さんみたいな人はずっとアナログにこだわっているんですけど、ぼくは楽な方がいいんでデジタル。
で、オケを作って打ち込んで、(大西に向かって)歌って、ぼくがベースを弾いたりしたら、「面白いかな」なんて思っているんです。

一作:いいね。じゃ~目指すは、『ふたりのビックショー』だね(笑)

大西:いいですね(笑)

一作:だから、パンク、ニューウェーブが出てきて打ち込みになって、80年代またそうじゃなくってみんな、「またバンドでやろう!」ってなって。
大西ユカリもバンドはバンドで勿論継続してやると。でもそういう新しい世界も一方でやる。それ、絶対いいと思うよ。

大西:なんかさ、シーナ&ロケッツってな、シーナさんと鮎川さんと鮎川さんのアンプしか見えないじゃないですか、絵が。はっと思った時に、ねぇ、鮎川さんおってさ、あのイメージなんですよ。

一作:あれこそニューウェーブだもの。

大西:自分あの夫婦凄い好きやったんで。

ラジオアダン:実は鮎川さんもパソコンが凄く好きで、それにまつわるご著書(『DOS Vブルース』)があるくらいです。

大西:へぇ~、そうなんですね。

一作:ニューウェーブ以降、そのふたりだけの志向は一個あると思うよ。“トラユカ”??……(笑)ユニットと、なんかちゃんとしたバンドと。
でも、バンドでやるって本当に大変じゃん。元ミュートビートのこだま和文くんも、新世界時代はバンドを休止していたからDJと2人のユニットでやっていたけど今は両方でやっている。

虎児:こだまさんは川勝(正幸)さんを偲ぶ会でお会いして、ぼく、ミュートビート大好きだったからご挨拶だけさせていただきました。

一作:へぇ~、そうだったんだ。
因にこの『酔談』の第3回目のゲストがこだま和文くん。

虎児:そうだったんですね。

一作:こだまくんいいよね。彼は素晴らしい。

虎児:そんな感じで喋ったことはなくても好きな人は一杯いますね(笑)

一作:うん。

虎児:喋って嫌いになっちゃう人もいるし(笑)

一作、大西:ガハハハハ(爆笑)

一作:ところで虎ちゃんにとってユカリちゃんの通り名的“昭和歌謡”という音楽カテゴリーは正直どう思っているの?
好きなの?嫌いなの?

虎児:嫌いです(キッパリ)

一作、大西:ガハハハハ(爆笑)

一作:じゃ~、そこでどうする?

虎児:昭和歌謡という言葉がなければ実は大好きです(苦笑)
言い換えれば、歌謡曲は大好きです。

一作:なるほど。
じゃあ、昭和なんてなくていいじゃん。
昭和も平成も令和もなくて、

虎児:だからその、日本くらいじゃないですか、もともとは中国からかもしれないけど元号というものがあるのは。
昭和歌謡があるのなら、今の音楽なんだから令和歌謡でもいいと思う。

一作:なら令和歌謡をふたりでやればいいじゃん。

虎児:そうですね。
だから、古い曲と、新しい曲と真ん中な曲があると思うんです。

一作:真ん中の曲って、なにそれ?

虎児:なんていうんですかね?メロディーラインが綺麗な曲と、アレンジだけな曲と、

一作:例えば?

虎児:例えば、……、メロディーラインが綺麗な曲、なんですかねぇ~?……、例えば彼女が歌っている、『北国行きで』は好きですね。

一作:いいよね。

虎児:あと沢田研二さんの『サムライ』って曲のメロディーも凄く好きだし。
それとは別に、デジタル世代、メロディー世代、アレンジ世代みたいなものがあって、とにかくミクスチャーが好きなものでひとつにこだわりたくないんです。

一作:凄く分かります。
(大西に向かって)凄くいい人。このくらいでないとあんたと上手くいかないでしょ。ガハハハハ(爆笑)

大西:ハハハハハ(爆笑)
ほんまですね(笑)
でも、ソウル、R&B、ブルース、歌謡曲、で、なんか、……、ロックンロール。
ってところのいろんなカテゴリーを、同じ時代にやってきたんで、例えばなんか、「ロックンロール」って言ったらキャロルみたいなクールスみたいな曲やけど、後期はなんか、「歌謡曲みたいな感じよねぇ~」、そんなんが分かり合えるような。
かというて、ブルースとかゴスペルとかみたいなとこいっても分かるような。
で、ラブソングと云うかバラードも通じるような。

一作:ちょっとふたりでラブソングやってよ(笑)
まるごと1枚、ふたりでラブソングをやれば。

大西:そうですね。いいと思います。

◇◆◇◆◇
 酔いもまわりいよいよこのトークラリーも大詰め。「ここで引き出さねばどこで引き出す!?」とばかりに話を恋バナへと強引に持ち込もうとする一作。それを何食わぬ顔でクールに流すふたり。
 さあ、この最終の攻防、果たして軍配がどちらに上がるのか!?
◇◆◇◆◇

一作:いいねニューウェーブと大西ユカリの融合。

虎児:だからぼくは、怒られるかもしれないけど、ジャンルとして音楽はロックンロールだと思ってるんで。

一作:うん。

虎児:別にボサノバでもロックンロール、結局メンタルだと思うんです。

一作:うん、絶対そうだよ。

虎児:だから、そういう部分で言うと、ユカリと出会ったのはもう20数年前で、その時は、「ユカリさん」とか、「大西さん」とか、

大西:やっぱり長生きやろな、長生きがロックンロールなんやろうな。

一作:で、どのタイミングで女性として意識したの?

虎児:もともと歌手として歌は、「上手いな」って思っていて。ぼくは綺麗な声が好きなんですよ、で、あんまり綺麗な声じゃないじゃないですか。

大西:ハハハハハ(爆笑)
ギャ~ってするからね(笑)

虎児:そうそう。
なんかオーバードライブがかかっている声なんで、

一作:オーバードライブなの?ガハハハハ(爆笑)

ラジオアダン:ギターアンプで云うところのフルテン!(笑)フィートバック奏法(笑)

虎児:なんか必要のないところでもオーバードライブがかかる、こうバラッドでもかかっちゃったりするんで、「面白いなぁ~この人」って意識はありました。
で、あと、「関西人だなぁ~」って(笑)

一作:ガハハハハ(爆笑)
それはあるよね(笑)

虎児:いまでもあります。

一作:で、それを女性としていつ頃意識しだしたの?

虎児:女性としては……、

一作:こりゃ~、『新婚さんいらっしゃい』だな(笑)

大西:あっ、そうっすか!?(笑)

虎児:ぼくらは変わっていて、会って、「付き合おう」じゃなかったんです。

大西:会うてないのに、

虎児:ある日、ぼくがシンガポールへ行くことになったんです。

一作:なにしに?

大西:(虎児に向かって)撮影でな。
ジャケット撮影でシンガポールへ行っていたんです、クレイジーケンバンドで。

虎児:で、1週間くらいいたんですけど、その少し前くらいに、要はメールですよね。

大西:メールでやりとりしてたんです。

一作:メールでやりとりってことは、ユカリちゃんはもう惚れていた?

大西:なんか2~3年前に、誕生日が近いもんで、凄く。1週間しか違わへんからおたがい、「おめでとうございます」、「おめでとうございます」ってやりとりがちょっと前からあったんです。
で、「1回大阪へ行きたいと思います」って、「じゃ~、来てくださいよ」、そのやりとりがあって、それから毎日メールで。だから会うてないよの、何年か会うてないの。
メールでやりとりしている中で、「撮影でシンガポール行きます」って、「ええ!シンガポール!?」って。だって遠いやん。

一作:そんなことないよ(笑)

大西:「遠いからメール届けへんちゃう!?」とか思ったら、大間違い(笑)
そんなのメールとかWi-Fiとか、

一作:ガハハハハ(爆笑)
それは可笑しい!流石!!

大西:それが近いこと!
それで盛り上がったんよね。

一作:ああ、それで盛り上がったのか。

大西:なんか、その時に始めてテレビ電話みたいことしたんよ。

一作:その時、既に大西ユカリは虎ちゃんに惚れてた訳だ。

大西:なんかやりとりをしてて、「なんかばんばってはるんやなぁ~」って……、

一作:照れないでちゃんと言いなさいよ(笑)

大西:「この人凄い名前やなぁ~」って、四文字熟語みたいな名前でしょ。
「四文字熟語みたいなお名前ですね」から始まってね、で、おんなじ星座で。

一作:でもやっぱり、「この人ええなぁ~」って思っていたんでしょ?

大西:当時の虎ちゃんのメールのアイコンが、バイクに乗ってる写真やったんですよ。あの、……、ドカティーやったかな?なんか、イタリアのバイクだったんですよ。
ハーレーの人と違てイタリアのバイクの人ってロマンチックやんか。ルパン三世の峰不二子みたいな、

一作:ガハハハハ(爆笑)
なんでルパン三世ってヨーロッパ志向なのかね?ロケーションがレマン湖だもの(笑)

大西:ヨーロピアンか??(笑)
チャーリー・コーセーイの歌で出てくる峰不二子のバイクって、仮面ライダーとかが乗ってる前傾姿勢のさ、「かっちょええなぁ」思て。

一作:それまではなんとも思わなかったの?

大西:密には年にいっぺんやんか、Facebookで繋がり出して、「誕生日おめでとう!」って。

一作:虎ちゃんはその頃はどう思っていたの?

虎児:ぼくは、まず歌が好きだったのと、オーバードライブの(笑)

一作:大西ユカリのファンだったの?

大西:CD買うてくれてん。

虎児:デビュー当時買いました。

大西:それが森(センセ)さんが覚えてて。
「新宮さんはねCDを買うてくれたんですわ」って(笑)

虎児:そん時に一言二言始めて話したんじゃないかな?

大西:大阪のキャバレーのイベント。

虎児:その打ち上げで、21年くらい前かな?
覚えているのが、ぼくが関東弁を喋っているのに、ユカリが、「あんた関西の人やろ?」って言ったんです。

一作:(大西に向かって)なんで分かったの?

大西:分からん、……、なんか関西ぽかったちゃう?響きが。
なんか言うてたんちゃう、でも悪気はないよ、全然悪気なく。
とにかくその頃、クレイジーケンバンドと大西ユカリと新世界がいろんなイベントで一緒になっていたんですわ。

虎児:あと、亡くなっちゃった渚ようことか、

大西:あの頃は一緒やったなぁ~。
ようこちゃんは虎ちゃんと仲よかったなぁ~……。

虎児:話それちゃうけど、ようこちゃんは会う度に毎回喧嘩してたんです(笑)

大西:なんか小学校の男子と女子が言い合いする感じってあるやない。そんなだったん違う、ようこちゃんとは。

虎児:あの子はぼくに会うとすぐからかってくるんです。

大西:「ガーちゃん(虎児)歯磨き粉食べる!?」とかね(笑)
「いらねぇ~よ!」とかね(笑)
じゃれてはったんだろうね。

一作:で、ふたりの恋のその先は?

大西:で、3年くらい前に盛り上がったんですけど、お互いひとりやったから、「また会いましょうね」みたいな感じで。

一作:虎ちゃんはユカリちゃんに対してどうだったの?

大西:いや、この人はないんちゃう。
わたしはめちゃラブビーム、ピアァ~~~やってた(笑)

一作:それええなぁ~。ガハハハハ(爆笑)

大西:「虎児さぁ~~~~ん♡♡」言うてました(笑)

一作:ええなぁ~。やっと本音が出た。ガハハハハ(爆笑)
今日は凄くよかったよ。(進行に向かって)まだ尺足んない?

ラジオアダン:尺全然足りてますよ(笑)

一作、大西、虎児:ガハハハハ(爆笑)

一作:凄い喋った??

ラジオアダン:皆さん楽しそうだったんで、「レコーダーを切ると白けるかな?」と思って回していただけです(笑)

一作:重複するけど、おれ、普段準備しないんだけど、ユカリちゃんと会うのが久々だったから、「今回、どんな話をしようか?」ってことでネット見て結婚のことを知ったんだけど、話題が全部そこへいっちゃったね(笑)

虎児:対談の邪魔しちゃったかなぁ~……、

一作:とんでもない。

大西:一作さんに紹介だけして、「横でちょりんと見てるわ」って言うてはったから、まあ、それはそれでと思っていたけど、よかったです。

一作:今日久々に会ったけど、震災後、新世界にユカリちゃんのバンドを関西から呼んでいた時は、本~~~~(凄くためて)当に貧乏だったから。
それでもゆうぞうとユカリちゃんはおれはルーティンでやりたかった。

虎児:でも、本~~~~(凄くためて)当に貧乏だとパワー出ますよね。
なんか中途半端に金持っていると流されちゃう。
ちょっとユカリには悪いんだけど、貧乏になりたいんだよね。

一作、大西:ガハハハハ(爆笑)

大西:嫁にそんな(笑)

一作:だめだよ(笑)この女は贅沢な女なんだから(笑)

大西:ハハハハハ(爆笑)

一作:やっぱり幸せにしなきゃダメだよ。
あなたがひとりで貧乏になるのはいいけど、大西ユカリを貧乏にしちゃダメ。

大西:ハハハハハ(爆笑)

虎児:まあでも、貧乏になればまた、「ちきしょう!!」って気持ちが、

大西:芽生えてね。

虎児:ぼく何回もそういう経験してきたけど、60代になる時、「ちきしょう!!」ってパワーがあるかどうか試したいんです。

一作:それは素敵なことだね。貧乏っていいよね。
なんかうまくいって、調子に乗ってるときにどーんと落されてまたふり出しに戻るみたいな。
まあともかく、大西ユカリってシンガーを幸せにね。

虎児:そうですね、それが責任ですね。

一作:綺麗にまとまった?
なんか、新婚さんいらっしゃいから段々、『(凡児の)娘をよろしく』みたいみなっちゃったな。ガハハハハ(爆笑)。

大西、虎児:ガハハハハ(爆笑)。

一作:今日は忙しいのに来てくれてありがとう。末永くお幸せに!

大西、虎児:ごちそうさまでした。


◇◆◇◆◇
 不屈のデカ魂、ロバート・アイアンサイドに始まり、上方の至宝、桂文枝、そして最後はその文枝に笹岡薬品提供トーク番組枠のバトンをリアルに渡した西条凡児へと一作がメタモルフォーゼした今回のロングラン。
 泉岳寺アダンのホスピタリティを象徴する、食べきれなかった鯛飯をおむすびにし、凡児の常套句、「おみあげ おみあげ」よろしくふたりに手渡し見送る一作。なにかをなし遂げた(?)男の顔は実に清々しい(?)
 夫婦としての正に共同作業を始めようとするふたり、一作からの提案、“まるごと1枚ラブソング”は今後現実のものとなるのであろうか?
 そんなこと誰も分かりはしない。
 だって、人生の殆どの出来事は、酔っぱらいが酒場で夢想したことを、神様が空模様に沿って暇つぶしにチョイスしているだけなのだから。
 とぅ・びー・こんてぃにゅーど

@泉岳寺「アダン」

テキスト、進行:エンドウソウメイ

写真:門井朋

●今回のゲスト

大西ユカリ/プロフィール

1964年4月6日生まれ。
「大西ユカリと新世界」を休止後、2009年~ソロ活動中。


新宮虎児/プロフィール

1963年3月30日生まれ・通称ガーちゃん。
クレイジーケンバンドでエレキギター・キーボード担当し、スカバンド『SKA-9』メンバーとしても活動中。


河内一作/
山口県生まれ
八十年代から霞町クーリーズクリーク、青山カイなど常に時代を象徴するバー、レストランの立ち上げに参加。九十年代、仕事を辞め世捨て人となる。
六年間の放浪生活の後社会復帰し、アダン、青山タヒチ、白金クーリーズクリーク、音楽実験室新世界、奥渋バー希望、南洋ギャラリー、など手がける。お楽しみはまだこれからだ。