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黄昏ミュージックvol.34 道/折坂悠太

黄昏ミュージックvol.34 道/折坂悠太

 折坂悠太の名前を始めて知ったのは、2015年“のろしレコード”立ち上げの報がメディアに流れた時だったと記憶している。
 その後、地道なライブ活動や、大型野外フェスへの出演等により徐々にオーディエンスの心を捉えていった訳だが、近年の大手芸能プロダクションとのマネージメント契約。更にはCXドラマの王道“月9”での主題歌登用と正にお茶の間にまでその魅力が届くようになった状況を実感するにつけ、筆者には驚きにも似た感情がわき起こる。
 さて、今回、黄昏ミュージックとして取り上げる『道』は、キャリア最初期、2016年、初のフルアルバム『たむけ』に収録された楽曲だが、既にその後の快進撃を予見させる秀逸な出来となっている。
 折坂のみが持つ希有な音楽性、叙情を湛えた新たな民謡の構築。その独自のメロディーと完全な調和をもたらすレトロとも云える日本近代文学的言語選択。このシンプルに聴こえるが実に絶妙のバランスに配置された様式はこの時期、略完成していた。
 そして、豊かな倍音を豊富に含むオンリーワンの歌唱は一度触れたら離れられない強い習慣性をも持つものだと、後に多くの人々が知ることになるのだった(se)