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黄昏ミュージックvol.16 I STAND ALONE(一人)/井上堯之

黄昏ミュージックvol.16 I STAND ALONE(一人)/井上堯之

 60年代の訪れと共に生を受けた筆者に執っての洋楽との出会いには、必然的に、その時代を席巻していたグループサウンズなるものがその橋渡しとなっていた。
 1965年、ドイツのアイドル的ロックバンド、ザ・レインボウズが「バラ・バラ」なる単純な構成の英語曲をヒットさせた。
 当時5歳の筆者が入学したての校庭のブランコで遊んでいると、2つ程歳下の小柄な少年が「♪アベビベビ バラバラ♪」(実際は『♪My Baby Baby Balla Balla ♪』と歌っている)と取り憑かれたようにそれだけを大声で繰り返し唄うのだが、そのバラバラ小僧は他に何も話すでもなかった。
 連日同じ場所に姿を表すその子を、筆者や友人たちは面白がって「『バラ・バラ』歌ってよ」と急き立て、その子も拒むでもなく無数の歌唱を続けた。
 “流行歌”とはよく云ったもので、筆者たちはやがて腫れ物が取れたかのように「バラ・バラ」なる曲がなかったかのように忘れていった。それと時同じくしてバラバラ小僧もどこかへ姿を消した。
 2年後の67年、GS群の中でも特に好きだったザ・スパイダースが「バラ・バラ」をカヴァーするが、バラバラ小僧を介し急激に消化してしまったその楽曲に筆者が再度興味が湧くことはついになかった。
 スパイダースはムッシュかまやつ、大野克夫という優れたコンポーザーを抱えていたが、彼等からの大いなる影響もあり、解散後、井上堯之がコンポーザーとして飛躍する。
 そして、本年5月2日、黄昏時のこの名曲を残し身罷る。(se)