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黄昏ミュージックvol.55 IEKI吐くまで/片岡鶴太郎

黄昏ミュージックvol.55 IEKI吐くまで/片岡鶴太郎

 コロナ禍を理由に酒場への締め付けは頂点に達している。極論を述べるなら“条件付き禁酒法”と言ってもいいのではないか?
 さて、そんな状況なので今回は逆手を取って、敢えてアルコール、酒場の最大の効用、悲恋の吐口的楽曲を取りあげようと思う。
 コンポーザーチームは美空ひばりの最後のシングル曲『川の流れのように』の三人、秋元康(作詞)、見岳章(作曲:ex.一風堂)、竜崎孝路(編曲:ex.ペドロ&カプリシャス)。
 曲調はクールファイブなどでお馴染みのR&Bの和製可変。つまりムード歌謡に組み込まれる。
 注目はやはりその詞。日本では、城卓矢のヒット曲『骨まで愛して』に代表されるように、求愛の最大の深層を骨格に求めるものだが(ローザ・ルクセンブルグの名曲『ひなたぼっこ』にも同様の表現が見受けられる)、この楽曲の世界観はそれを体液に置き換えている。しかも、血液ではなく胃液。その究極の状態に導く至高のトリガーがアルコールという訳なのだ。
 このドラスティックな流れを俳優ではなく、ヨゴレ芸人時代の片岡鶴太郎が歌うから更に凄みが倍増する。
 そういえばこの楽曲、以前山下達郎氏が自身の番組『サンデーソングブック』〜昼の珍盤奇盤特集〜で、“氷川きよしなどの純演歌歌手が歌えば新たな魅力が出るはず”と語っていたが、それはそれで是非聴きたいものである。(se)